労働団体や人権活動家、ジャーナリストらを標的とした殺害、拉致、逮捕・勾留などの事件を、7日から10日ごとにまとめて時系列でお知らせします。事件の詳細については、出典をご覧ください。
◆2023年1月30日(月)
1月29日のブリーフィングにて、ロドルフォ・アズリン・ジュニア警察長官は、ドゥテルテ政権におけるドラッグ戦争に関する説明責任は国内の手続きで十分であると述べた。
フィリピン政府は独自に調査しているとして、国際刑事裁判所による調査を拒否してきたが、1月26日に、国際刑事裁判所予審第一室は捜査再開を承認した。
公式発表だけでも、ドラッグ戦争の際に殺害された被害者は6000人以上。有罪判決を受けたのは、17歳の高校生を殺害した警官3人のみ。
PNP: Internal investigation, DOJ review enough for ‘drug war’ accountability, philstar, January 30, 2023.
Philippines defiant, says won’t cooperate with ICC investigation, interaksyon, January 27, 2023.
◆2023年1月30日(月)
フィリピン政府の反テロ評議会は、草の根の医師マリア・ナティヴィダッド・マリアン・シルヴァ・「ナティ」・カストロ(以下、カストロ医師)をテロリストに指定した。
同評議会は、カストロ医師はフィリピン共産党-軍事部門新人民軍(NPA)-民族民主戦線(NDF)を支援していると主張。
カストロ医師は、昨年2月、誘拐などの容疑で逮捕、起訴された。しかし、同訴訟は、アグサン・デル・ノルテ地域裁判所のフェルナンド・フダラン・ジュニア裁判長代行判事によって却下され、カストロ医師は3月25日に釈放されていた。
Gov’t designates as terrorist a community doctor who helped Lumad of Mindanao, Rappler, January 30, 2023.
Anti-Terrorism Council designates red-tagged community doctor a terrorist, philstar, January 30, 2023.
◆2023年1月30日(月)
犯罪捜査・取り調べグループ(CIDG)の捜査官は、ジェネラル・サントス市の家宅捜索において、フィリピン共産党(CPP)-新人民軍(NPA)の高官と言われる3人を逮捕した。3人は、殺人と反乱の罪で起訴された。当局は、3人から武器等を押収したと主張。
CPPは、証拠は捏造されたものと反論。
3人のうちの一人、ルベン・アベニール・サルタは、2015年3月に銃器や爆発物の不法所持の容疑で逮捕されたが、フィリピン政府とフィリピン共産党との和平交渉に参加するため2016年に仮釈放された。そして2018年6月、裁判所は「検察側の証拠とその保管経路に重大な疑いがある」とし、容疑を否認するサルタらの主張を支持する判決を下した。
CPP denounces arrest of ailing retired peace consultant, 2 others, BULATLAT, January 30, 2023.
CIDG arrests 3 ranking CPP-NPA officials in General Santos City, MANILA BULLETIN, January 30, 2023.
◆2023年1月30日(月)
マルコス大統領のジュアン・ポンセ・エンリレ首席法律顧問は、「国際刑事裁判所は、我々に対する主権を持たない」、フィリピンに入国しようとする国際刑事裁判所職員は逮捕されるだろうと述べた。
Enrile wants ‘interfering’ ICC arrested should they enter PH, Rappler, January 30, 2023.
◆2023年1月31日(火)
午前11時31分、国家警察は、バギオを拠点とする進歩的なコルディリエラ人民連合(CPA)の研究者であるジェニファー・アウィンガン(49)を同氏の自宅で逮捕した。
逮捕状は、アブラ州地方裁判所第2支部のコーパス・アルザテ判事が1月24日によって発行され、アウィンガンを含めて7人の名が挙げられていた。6人は、CPAのウィンデル・ボリンゲット議長、CAP地域評議員ステーヴ・タウリ、地域開発活動家のサラ・アベロン、農民活動家ローデス・ギメネス、イロコス調査・エンパワメント・開発研究センターのフローレス・カン、オンラインニュースの特派員ニーニョ・オコネルら。
アウィガンの子で青年活動家のカレン・レニナ・タガオも2022年10月にケソン市において逮捕されている。
逮捕状に名前を挙げられたタウリは、2022年8月に拉致され、24時間後に解放された。タウリによれば、拉致犯はタウリに、CPP-NPAにおけるタウリの地位に関する調書に署名するよう強要した。
同じく逮捕状に掲載されたボリンゲットは、2020年8月、2018年に発生した先住民族殺害事件の容疑者として起訴された。だが、タグム市地方裁判所のシャロン・ローズ・サラシン判事は、同訴訟を却下した。
アベロンは、他2人とともに、2022年9月に殺人罪で起訴された。だが、アブラ州サン・ファン巡回裁判所のエイリーン・カスティリオ‐リマンド判事は、同訴訟を却下した。
Abra court orders arrest of 9 activists in Northern Luzon, INQUIRER. NET, January 31, 2023.
Statement | Cordillera Peoples Alliance, Facebook page of Cordillera Peoples Alliance, February 1, 2023.
アムネスティ・インターナショナルはフィリピン政府に対して、ジャーナリストのパーシバル・マバサの殺害について「独立かつ公平な」調査を行うよう要請した。
Amnesty International calls for ‘independent, impartial’ investigation of Lapid’s killing, philstar, February 2, 2023.
◆2023年2月1日(水)
ロンブロン州シブヤン島の住民は, 1月31日に、アルタイ・マイニング・カンパニーが所有するトラックを止めるためにバリケードを設置した。
市民団体は、「国家警察は、大企業の利益ではなく、国民の利益を守るべきだ」と訴えた。
Facebook page of Altermidya, February 1, 2023.
◆2023年2月2日(木)
法医学病理学者のラケル・フォーチュンは、2017年にドラッグ戦争で殺害されたキアン・デロス・サントスについて、当局は「表面的」で不完全な検死しか行わなかったと述べた。
国家警察は、サントスの胃の中に内容物があったと検死の結果を報告したが、フォーチュンは、遺体は表明を切開したに過ぎないのだから内容物の有無は判断できないはず、検死の基準が低いと指摘した。
Expert flags ‘superficial’ autopsies on body of Kian delos Santos, philstar, February 2, 2023.
◆2023年2月5日(日)
超法規的略式または恣意的な殺害に関する国連特別報告者モーリス・ティドゥバル・ビンス博士が、超法規的殺害を調査する地元当局の能力向上を支援するため、2月6日(月)から2月9日(木)までフィリピンに滞在する。
Forensic expert to help raise government capacity to investigate killings, philstar, February 5, 2023.