【15日=東京】国連食糧農業機関(FAO)が12日に発表した『2021年世界食料・栄養白書』によると、フィリピンで2018年から2020年の間に深刻な食糧難に陥った人たちは人口の約4%に当たる430万人いたことが明らかになった。深刻度で1段階下の「中程度または深刻な不安」を抱える人は4610万人で、5人に2人が食糧への不安を抱えているという。
報告書では、前回調査の2012年からは減少したものの、発育不全が認められる5歳以下の子供たちは2020年現在で300万人と推定された。また、15歳から49歳で貧血の影響を受けた人は、2012年の420万人から2019年には250万人に減少したという。国連食糧農業機関はこうした減少傾向については「新型コロナウイルスのパンデミックにもかかわらず、飢餓や栄養不良への対応という点で最善の対応を生み出した」とフィリピン政府の対応を評価した。
─ 新型コロナ禍で食糧難が加速
しかし、実際には、新型コロナの感染拡大によって、市民に食糧が回らない状況は深刻化していると言える。2020年4月には、マニラ首都圏で都市貧困層が食糧不足に抗議する事態が発生した。今年に入ると、市民が食糧を分かち合う「地域の食料庫」運動は全国に拡大している。山間部ではNGOが食糧を分配する活動も続けられている。こうした市民やNPOの動きに対して、政府は政府批判につながらいか神経を尖らせており、政府高官が活動の中心メンバーに対して「共産主義者」のレッテル貼りをする事態も出ている。食糧分配の活動をした人の中には何者かによって殺害されたケースも出ている。
〈Source〉
FAO, IFAD, UNICEF, WFP and WHO, 2021, The State of Food Security and Nutrition in the World 2021.
Food-insecure Pinoys rise by 4 million in 2020–FAO, BusinessMirror, July 13, 2021.
クラリッサ・シングソン, 2020, 「ネグロスからの手紙──虐殺と弾圧の島で 第 1回 友の亡骸は雨に打たれていた」『世界』岩波書店, 939:192-197.
クラリッサ・シングソン, 2021, 「ネグロスからの手紙──虐殺と弾圧の島で 第2回 コロナ禍の飢餓、そして密告」『世界』岩波書店, 940:264-269.
二宮書店編集部, 2021, 『データブック オブ・ザ・ワールド 2021年版──世界各国要覧と最新統計』二宮書店.