【13日=東京】2021年12月10日にノーベル平和賞を受賞したフィリピン・ウェブニュースサイト・ラップラー代表マリア・レッサ氏への誹謗中傷がSNS上に広がっている。ラップラーの全地域編集長インダイ・エスピナ氏によれば、憎悪メッセージ(ヘイト)には、政府批判は悪である、政府批判は国を辱める行為であるといったものが多く、また、ネット上で情報を操作するトロール(荒らし)行為の可能性もあるという。
― 悪化するマリア・レッサ氏へのヘイト
ラップラーの全地域編集長インダイ・エスピナ氏によれば、レッサ氏の受賞式での講演動画には、1000以上のコメントが寄せられ、そのうちの数百は政治的な誹謗中傷であるという。不適切な投稿として消去されているものもあるようだが、「レッサはフィリピン人ではない」、「レッサはフェイクニュースの女王」、「ラップラーの記事は国を辱めるもの」、「先に皮膚の病気を治せ」といったヘイト・メッセージが並んでいる。
― レッサに対するヘイトの蔓延は、レッサが指摘した情報操作放置の証左
エスピナ氏は、2021年12月11日に自身のフェイスブックに投稿した。
「ノーベル平和賞のページやマリア・レッサの平和賞を取り上げたページを荒らしている人たちは、レッサを辱めたというより、むしろ、暴力的な国家やその仲間、他方で強欲的なハイテク企業が持続的な偽情報の拡散を放置しているために生じる有害なたわごとを提示しているに過ぎない。」
― レッサ氏、憎悪や恐怖、怒りの増幅につながる巨大プラットフォームの運営に警鐘
レッサ氏は、ノーベル平和賞受賞講演の中で、企業の莫大な利益のために、ネット上で市民の私生活が抽出され、売買され、操作されており、そのことが、いまや、市場や選挙に対する直接的な脅威になっていると指摘し、憎悪や恐怖、怒りの増幅につながる情報システムのありようを変革する必要があると訴えた。
ソーシャルメディアで起きたことはソーシャルメディアに留まるものではなく、現実世界の暴力として現れることを、1月6日に米国の国会議事堂に暴徒化した市民が押し寄せた事件を例に述べた。
〈Source〉
FULL TEXT: Maria Ressa’s speech at Nobel Peace Prize awarding, Rappler, December 10, 2021.
Nobel-Winning Journalists Denounce War Talk and Online ‘Toxic Sludge’, The New York Times, December 10, 2021.
Ressa hits US tech giants, Muratov notes ‘dark time’ at Nobel rites, Inquirer. Net, December 11, 2021.
Ressa receives Nobel prize, says social media firms fuelling ‘toxic sludge’, philstar, December 11, 2021.