2025年の総括と2026年の展望
大統領と副大統領よる新年のメッセージ
― 2025年マルコス大統領による新年のメッセージ(全文)
私は、2026年の新年を迎えるにあたり、世界中のフィリピン人とともに、この新年を歓迎するものである。
新しい年の到来は、常に省察と刷新の瞬間である。それは、過ぎ去った一年を振り返り、その教訓、課題、そして達成を見つめ直す機会を私たちに与えると同時に、私たちの前に広がる可能性に対して、希望と目的意識をもって未来を見据える機会を与えるものだ。ゆえに、2026年に足を踏み入れるにあたり、私はすべてのフィリピン人に対し、規律、自信、そして国家の進歩に対する共有された決意をもってこの年を受け入れるよう呼びかける。
個人的な抱負を超えて、新年は、私たちが皆とどのように生きているのか、互いをどのように支え合っているのか、そして私たちの選択が国家をどのように形づくっているのかを省みることを私たちに求めている。社会が繁栄するのは、人々が無関心よりも共感を、利己よりも奉仕を、絶望よりも希望を選ぶときである。したがって、私たち政府の責務は、団結を育み、思いやりを促進し、わが同胞の偉大さを示す「新しいフィリピン」建設に、不断に取り組むことである。
これから始まっていく日々に向けて、私たちが互いの人生において果たす役割について、より明確な理解を持ち、状況だけによって形づくられる未来ではなく、私たちの意志の強さと、集団としての目的の明確さによって形づくられる未来を築くという、新たな決意をもって前進していくことを願うものである。
私たちすべてにとって、新年が幸多きものであることを願う。
新しいフィリピン万歳。
― サラ副大統領による新年のメッセージ
あなたがたの上に平安と慈悲、そして祝福がありますように。
皆さんにとって良き、すばらしい一日でありますように。
皆さん、良い一日をお迎えください。
世界中のすべてのフィリピン人一人ひとりに、活気に満ちた、心からの新年の挨拶をお伝えする。2026年を迎えるにあたり、あらゆる迷いや恐れを、今こそ振り払おうではないか。今は新たな章の始まりであり、希望に満ちあふれた、まっさらな一枚のページである。私たちの勇気と決意を、再び燃え上がらせよう。
どのような困難に直面しようとも、私たちはすべての障害を乗り越えるための並外れた力を備えている。あらゆる試練の中で、私たちはより強くなって立ち上がる。私たちは新年を、団結し、新たな視点をもって始めるための招きとして受け止めてきた。私たちが力を合わせること、そして信仰を共有することこそが、真の変化への鍵である。共に努力し、共に祈り、2026年が希望と祝福の年となるよう願おうではないか。
皆さん、新年おめでとう。この新たな始まりが、より明るく、より豊かなものとなることを願う。フィリピンを愛そう――神のために、祖国のために、そしてすべてのフィリピンの家庭のために。
ありがとう。
― 似ているようで対立するメッセージ(筆者の視点)
ともに新年の祝福し、困難に立ち向かおうとする力強いメッセージではあるが、2人の敵対する立場を鑑みると、全く異なったメッセージとして捉えることができる。
マルコス大統領は、これまでの改革を内面的、理性的な対応によって乗り切ろうと語る。忍耐と守りの姿勢といえる。対して、サラ副大統領は、新たな社会のために迷いや恐れを振り払い、勇気と決意を燃え上がらせ立ちあがろうと国民を鼓舞している。完全に攻撃の姿勢だ。
国民の不満をやり過ごしたいマルコスと、不満をマルコスへの攻撃に転換したいサラの対立の構図が短いメッセージに隠されている。
〈Source〉
NEW YEAR’S MESSAGE OF PRESIDENT FERDINAND R. MARCOS, JR., 01 JANUARY 2026, Office of the President of the Philippines, December 31, 2025.
NEW YEAR DAY, Facebook of Office of the Vice President of the Philippines, December 31, 2025.
政治:The Diplomat記事より
― 2025年のフィリピン
ワシントンD.C.を拠点とし、インド太平洋地域の政治分析に定評のある国際的なオンラインニュースマガジンThe Diplomatは、2025年のフィリピンの政治について、次のように整理している。
2025年のフィリピン政治は、汚職問題と説明責任をめぐる論争が一年を通じて政権運営を左右した年であった。公共事業や洪水制御事業を含む政府支出に関する不正疑惑が相次ぎ、監査機関による指摘や議会調査が繰り返された。これらの問題は、個別の不祥事としてではなく、ガバナンスの信頼性そのものを問う問題として社会的関心を集め、街頭抗議や宗教行事の場でも政府批判の声が上がる状況を生んだ。
マルコス政権は、制度的手続きに基づいて疑惑に対処する姿勢を示してきたが、こうした対応は必ずしも国民の不信を払拭するには至らなかった。汚職をめぐる問題は、行政内部の管理能力や透明性の問題としてだけでなく、政権の説明責任に対する評価と結びつき、政権支持の基盤に影響を及ぼした。
2025年を特徴づけたもう一つの重要な要素は、マルコス陣営とドゥテルテ陣営の関係悪化である。選挙後に形成された両陣営の政治的協力関係は、汚職問題をめぐる対応を通じて徐々に緊張を強めた。特に、副大統領サラ・ドゥテルテをめぐる機密費の扱いに関する疑惑や、それに関連する告発、調査、政治的発言が相次いだことで、両陣営の利害対立が表面化した。
この対立は、単なる個人間の確執ではなく、政権内部の権力関係や連立のあり方に影響を及ぼした。汚職と説明責任をめぐる問題は、マルコス政権にとって統治上の課題であると同時に、ドゥテルテ陣営との政治的距離を広げる要因ともなった。
また、2025年に見られた抗議行動や世論の動きは、政権批判にとどまらず、統治の正当性や制度の機能に対する疑問として表出した。司法、立法、行政の各機関がどのように責任追及に関与するのかが注目され、汚職問題は制度全体の信頼性を問うテーマとして扱われるようになった。
総じて、2025年は、汚職と説明責任をめぐる問題が政治的緊張を高め、マルコス政権とドゥテルテ陣営の関係に明確な亀裂を生じさせた年であった。この状況は、翌年以降のフィリピン政治を理解するうえで重要な前提条件となっている。
― 2026年のフィリピンの展望
さらに、2026年1月に入り、同誌は、2026年の展望について、次のように述べている。
2026年のフィリピンは、マルコス政権に対する公的機関への信頼回復が最大の政治課題として残された状態で新年を迎えた。2025年を通じて表面化した汚職疑惑、公共支出をめぐる不信、抗議行動の広がりは、年を越えても政治環境に影を落としている。政権は存続しているものの、統治ガバナンスの正当性や説明責任に対する国民の評価は依然として揺らいでいる状況にある。
2026年初頭の政治状況では、マルコス大統領に対する辞任要求が一部で見られる一方、それが反政府勢力全体の共通戦略となっているわけではないことも明らかになっている。辞任要求が強まることによって、結果的にドゥテルテ陣営に政治的な余地を与える可能性を警戒する声もある。このように政権批判の在り方をめぐって、野党勢力や市民の間で意見の違いが生じている。
また、2026年の政治環境は、マルコス陣営とドゥテルテ陣営の関係が完全には修復されていない状態で推移している。副大統領サラ・ドゥテルテをめぐる機密費問題や、それに関連する告発や調査の動きは、前年から継続して政治的緊張の要因となっており、両陣営の間に存在する不信感を払拭するには至っていない。
政権に対する信頼を回復するためには、汚職問題への対応が引き続き重要な意味を持っている。そのためには、説明責任を果たす姿勢を具体的な行動として示すことが重要であり、2026年における政権運営の中心的な課題である。これは、単に個別の疑惑に対処することにとどまらず、統治の透明性や制度の信頼性をどのように確保するかという問題と結びついている。
総じて、2026年のフィリピン政治は、2025年に噴出した汚職問題と政治的対立の延長線上にあり、マルコス政権が公的信頼をどのように回復しようとするのかが、国内政治の主要な焦点として浮上している。
〈Source〉
The Philippines in 2026: Can Marcos Restore Public Trust?, The Diplomat, January 12, 2026.
The Philippines in 2025: Corruption, Accountability, and the Marcos-Duterte Rift, The Diplomat, December 22, 2025.
経済:世界銀行とIMFの報告書より
― 2025年の総括
2025年のフィリピン経済は、成長を維持したものの、前年と比べて減速した一年であった。世界銀行および国際通貨基金(IMF)は、2025年の実質GDP成長率をおおむね5%前後と見込み、政府が掲げていた成長目標を下回る結果になったと分析している。特に、2025年第3四半期に成長率が大きく鈍化したことが、年間成長率を押し下げる要因となった。
世界銀行は、2025年の経済を下支えした要素として、低水準で安定したインフレ率、比較的堅調な労働市場、そして国内需要の持続を挙げている。サービス部門と個人消費は引き続き成長を支える役割を果たし、金融・財政政策も全体としてマクロ経済の安定に寄与したとされる。一方で、公共投資の執行の遅れや投資活動の弱さが、成長の勢いを制約した点にも言及している。
IMFも同様に、2025年の成長鈍化について、投資の低迷と不確実性の高まりを重要な要因として挙げている。IMFは、国内外の経済環境に加え、公共支出をめぐる不透明感やガバナンスをめぐる問題が、企業や投資家の慎重姿勢につながった可能性を指摘している。これにより、輸出や民間投資の回復が想定よりも弱かったと分析している。
両機関はまた、2025年のインフレ動向について、中央銀行の目標レンジ内に収まり、実質所得の下支えとなった点で一致した見解を示している。低インフレ環境は消費を一定程度支えたものの、成長を加速させるには十分ではなかったとされる。金融引き締めの影響が残る中で、需要拡大には限界があったと位置づけられている。
総じて、世界銀行とIMFは、2025年のフィリピン経済を「安定は維持されたが、成長は減速した年」として描いている。マクロ経済の基礎条件は比較的堅調であった一方、投資の弱さ、公共支出の課題、ガバナンスをめぐる不確実性が成長率を押し下げたという点で、両機関の評価は概ね一致している。
― 2026年の展望
世界銀行とIMFは、2026年のフィリピン経済について、2025年よりもやや高い成長率が見込まれるとの見通しを示している。IMFは2026年の実質GDP成長率を約5.6%と予測し、世界銀行も2026年から2027年にかけて成長が持ち直す軌道に入るとの見方を示している。両機関とも、低インフレ環境と堅調な内需が引き続き経済を下支えするとの認識を共有している。
一方で、両機関は2026年の成長が自動的に加速するわけではない点にも言及している。IMFは、民間投資の回復が依然として不十分であることや、公共投資の実行能力が成長の制約要因になり得ると指摘している。世界銀行も、インフラ投資や公共支出が成長を支える潜在力を持つ一方で、政策実行の遅れや制度面の課題が成長率を抑える可能性があるとしている。
また、両機関は2026年に向けた共通の課題として、ガバナンスと制度の信頼性を挙げている。透明性の高い公共支出、予測可能な政策運営、構造改革の継続が、投資環境と中期的成長に影響するとされている。世界経済の不確実性や地政学的リスクも、2026年の外部リスク要因として言及されている。
〈Source〉
IMF lowers Philippine growth forecasts for 2025 and 2026, Business World, December 16, 2025.
Philippines Economic Updates, The World Bank, December 9, 2025.


