ICCとドゥテルテ/ヘグセス訪比/フェイクニュースとの闘い
ICCとドゥテルテ
― ICCの管轄権
3月30日、ロドリゴ・ドゥテルテ(以下、ドゥテルテ)前大統領の主任弁護人は、フィリピン前大統領に対する国際刑事裁判所(ICC)の訴追を裁判開始前に却下する「説得力のある」根拠があると述べた。
オランダ・ハーグでAFPのインタビューに応じたニコラス・カウフマン弁護士は、ICCがドゥテルテの訴追内容を正式に確認する前に、裁判所がこの件に対して管轄権*を行使できないと主張し、訴追を阻止したいと語った。
「弁護人として、私はこの管轄権に関する主張には説得力があると信じており、成功するはずだと考えています。もし成功しなければ大変落胆するでしょう」と彼は付け加えた。
「我々は予審の段階で、裁判所が本件に対して管轄権を行使できないと判断してくれるよう、説得するつもりです。もし裁判所が我々の主張を認めれば、訴追内容の確認審理は行われません。」
彼は次のような懸念も表明した。「ICCは今、多方面からの圧力やアメリカの制裁に晒されており、現在取り扱う事件が少ないため、このような注目度の高い事件を手放すことをためらうのではないかと心配しています。」
*この件での最大の争点の一つが「管轄権」だ。なぜならフィリピンは2019年3月17日にICCから正式に脱退しているからだ。しかし、ICCがドゥテルテに対して逮捕状を発行した際、ICCは以下のように述べていた。
「本件の行為は2011年11月1日から2019年3月16日の間にフィリピン領内で行われたものであり、ICCの管轄内にある。」
― ドゥテルテ誕生日にICCに集結する人々
ドゥテルテの80歳の誕生日にあたる3月28日、彼の支持者たちがオランダ・ハーグのICC前に集まった。彼らはドゥテルテの即時釈放を求め、彼の「ドラッグ戦争」を支持する姿勢を示した。
集会にはフィリピン国内外から多くの支持者が参加し、ドゥテルテのリーダーシップと政策を称賛するスピーチやプラカードが見られた。参加者の中には、彼の逮捕とICCでの裁判を政治的動機によるものと非難する声もあった。
一方、同じ場所ではドゥテルテの政策に反対するグループも集まり、彼の「ドラッグ戦争」における人権侵害を非難し、正義を求める声を上げた。これにより、ICC前は支持者と反対派の双方が集まる場となった。
オランダ当局は、これらの集会が平和的に行われるよう警備を強化し、両グループ間の衝突を防ぐ措置を講じた。結果として、大きな混乱や衝突は報告されていない。
― 送金ゼロ運動に合流するドゥテルテ釈放運動
フィリピン人エコノミストらは、ICCに拘束中のドゥテルテを支持する一部のフィリピン人海外労働者(OFW)が呼びかけた「送金ゼロ」ウィーク(1週間送金を止める抗議)」について、最も大きな打撃を受けるのは抗議対象のマルコス政権ではなく、送金を受けて生活しているフィリピン国内の家族だと警告している。
OFWからの送金はフィリピン経済の重要な柱であり、特に地方部や低所得層の家計にとって不可欠だ。送金の一時停止は、食費や学費、医療費など生活に直結する支出に深刻な影響を及ぼす。
しかし、このような送金停止は、1週間という短期間送金を押し留めるだけで、その後に送金されるため、政府や経済に大きな影響を与える可能性は低いと、ラップラー・エコノミストのJC プノンバヤンやIBONエコノミストのソニー・アフリカは語る。感情的なものではあるが、政府に大きな影響を与える可能性は低く、むしろ貧困層の家庭を経済的に追い詰める結果になると指摘する。
一方、BPI銀行エコノミストのジュン・ネリは、送金停止は為替市場や消費支出にも悪影響を及ぼす可能性があり、短期間でも経済的ダメージは無視できないという見解を示した。
〈Source〉
Duterte lawyer: ‘Compelling’ grounds to throw case out, GMA NEWS ONLINE March 31, 2025.
LIVE UPDATES: Prayer rallies on Rodrigo Duterte’s 80th birthday, Rappler, March 30, 2025.
OFW families will be hit hardest by ‘zero remittance week’ — economists, Rappler, March 27, 2025.
Supporters from various countries flock to The Hague for Duterte’s 80th, Rappler, March 29, 2025.
ヘグセス訪比
― インド太平洋地域初の訪問先に選ばれるフィリピン
3月28日、ピート・ヘグセス米国防長官はフィリピンを訪問し、マルコス大統領およびギルベルト・テオドロ国防長官と会談した。この訪問は、ヘグセスにとってインド太平洋地域への初の公式訪問であり、南シナ海における中国の攻撃的行動に対する抑止力強化を目的としたものであった。
会談後の共同記者会見で、ヘグセス国防長官は米比相互防衛条約に基づく米国の「鉄壁のコミットメント」を再確認し、フィリピンへの先進的な軍事能力の配備を約束した。具体的には、地対艦ミサイルシステム「NMESIS」や無人水上艇の配備、さらには特殊作戦部隊による二国間演習の実施が含まれる。
マルコス大統領は、ヘグセスの訪問が同盟強化への「非常に強いメッセージ」を送るものだと評価し、テオドロ国防長官も米国の防衛協力が地域の安定に寄与すると述べた。
一方、中国は米比間の軍事協力に反発し、南シナ海のスカボロー礁周辺に長距離爆撃機「H-6」2機を展開した。専門家は、これを米国とフィリピンへの警告と見ている。
ヘグセス国防長官のフィリピン訪問は、米比合同軍事演習「バリカタン」を前に行われ、地域の安全保障協力を強化する意図が示されている。
― フィリピン、F-16戦闘機の購入へ
4月1日、米国務省はフィリピンへのF-16戦闘機の売却を承認した。 この売却は、フィリピン空軍の能力向上を目的としており、地域の安全保障に寄与すると期待されている。 売却するのは、F-16C Block 70/72型16機およびF-16D Block 70/72型4機の計20機、総額は推定55億8000万ドル。
この売却は、フィリピン空軍の海上領域認識能力や近接航空支援能力の向上、敵防空網制圧能力の強化を目的としている。
なお、この売却は米国防安全保障協力局(DSCA)から米議会への通知が行われた段階であり、最終的な契約締結や機体の引き渡しには、今後さらなる手続きが必要となる。
― 中国からの批判
中国政府は、米国がフィリピンへのF-16戦闘機売却を承認したことに強く反発している。中国外務省の報道官である郭家坤は、フィリピンが他国と行う防衛・安全保障協力について、第三国を標的とせず、地域の平和と安全を脅かさないよう求めた。
また、郭報道官は「誰が火に油を注いでいるのか?誰が軍事的対立を挑発しているのか?誰がアジアを火薬庫に変えようとしているのか?地域の国々はこれを明確に理解していると信じている」と述べ、米国の行動が地域の緊張を高めていると非難した。
中国は米国および台湾の対中強行姿勢に対抗して、4月1日から2日にかけて台湾周辺で大規模な実弾軍事演習を実施した。
〈Source〉
China military drills targeting Taiwan put region’s security at risk, says US, Guardian, April 1, 2025.
Economists: ‘Zero remittance’ protest may affect OFW families, ABS-CBN, March 26, 2025.
Hegseth tells Philippines the Trump administration will ramp up deterrence against China threat, AP, March 28, 2025.
Hegseth reaffirms ironclad US commitment to Philippines to enhance threat deterrence, Reuters, March 29, 2025.
PHILIPPINES – F-16 AIRCRAFT, Defense Security Cooperation Agency, April 1, 2025.
US approves $5.5B sale of F-16 fighter jets to the Philippines; China reacts, AEROTIME, April 2, 2025.
US, Philippines must stand ‘shoulder to shoulder’ on China, Hegseth says, Aljazeera, March 28, 2025.
‘Who is turning Asia into a powder keg?’ Chinese FM warns against US-Philippines cooperation after F-16 sale, Global Times, April 2, 2025.
フェイクニュースとの闘い
― インターポールと協力強化へ
当局によるとドゥテルテ逮捕後、偽情報が急増している。ヘスス・クリスピン・レムリア司法長官は、フィリピン国家捜査局(NBI)のサイバー部門を強化するよう指示している。
レムリア司法長官は、偽情報は社会不安を招く恐れがあるとし、「我々は法の正しい側に立ちたい。偽情報は混乱や不安を引き起こすため、それを防がなければならない」と語り、「国境の概念は薄れつつある。遠く離れた場所から偽情報を流している者を追跡することも、近い将来には現実的になるだろう」と述べた。
NBIは、偽情報の拡散者を追跡するため、国際刑事警察機構(インターポール)の協力を要請した。NBIのハイメ・サンティアゴ副局長は、海外在住のフィリピン人が虚偽情報を拡散している場合、インターポールの協力を得て身柄を引き渡すことが可能であると述べた。
― 規制法制化への意気込み
記者会見で、偽情報対策の法制化への意気込みを語る上院議長のフランシス・エスクデロは、「憲法は言論と表現の自由を保障しているが、それは無制限ではない」と述べ、「誰でも意見を発する自由はあるが、それを事実として提示する場合には精査が必要です」と説明した。
エスクデロ上院議長は憲法第3条第4節を引用し、「言論、表現、報道の自由を制限する法律は制定してはならない」と述べ、「よって議会もこの原則に反する法律を制定してはならない」と強調した。
― 規制法制化への慎重論
元バヤン・ムナ議員で上院選候補のテディ・カシーニョは、「虚偽情報を流す者に責任を負わせるべきだが、表現の自由を抑圧する手段に訴えるべきではない」と語った。
「嘘や偽情報を拡散した者は、当然その責任を負うべきだが、言論を封じるような対応は憲法の精神に反する」と述べた。
また、フィリピン国家人権委員会(CHR)は、捜査機関に対し「表現の自由に対する事前制約となり得る刑事訴追の行使には慎重であるべきだ」と警告。「CHRは、言論の自由の享受に直接影響を及ぼす刑法の運用について、捜査当局が慎重であることを求めます」と声明した。
〈Source〉
NBI taps Interpol to go after fake news peddlers, philstar, March 25, 2025.
Remulla says PH can act on fake news peddlers abroad, Philippines News Agency, March 24, 2025.