フィリピン政経フォーカス
(2月8日-2月21日)

【写真】エドサ革命記念日の結集を呼びかけるバヤンのポスター/via Facebook of BAYAN, February 20, 2024.

― 下院が経済条項改正案提出
 2月19日、下院指導者等は1987年憲法の特定の経済条項の改正を求める両院協議会7号決議案(RBH7)を提出した。提出したのは、アウレリオ・ゴンザレス・ジュニア下院上級副議長、マヌエル・ホセ・ダリペ下院内総務、デイビッド・スアレス下院内副総務。
 ゴンザレス下院上級副議長は、公益事業、教育機関、広告業界の外国資本所有に関する制限の改正が決議案の目的であることを指摘した。
 この決議案(RBH7)は、上院が1月初旬に提出している両院協議会6号決議案(RBH6)と同様に、上記それぞれの投資分野の投資制限を別途法律で規定することを提案する。
 また、ゴンザレス下院上級副議長は、マルコス大統領とフアン・ミゲル・ズビリ上院議長、マルティン・ロムアルデス下院議長が憲法の特定の経済条項を緩和する必要があるという点で同意していると述べた。

― 上院と下院との小さくて大きな相違
 上院で先月に提出されたRBH6と先日下院で提出されたRBH7は、1文を除いて、同じ内容となっている。その異なる1文とは、上院RBH6で「各院が別々に投票」するとされる文言が、下院のRBH7では削除されている点である。
 ゴンザレス下院上級副議長は、憲法改正のスピードアップのために上院と同内容の決議案を下院においても提出したと述べているが、それが、上院での「各院個別投票」提案への対抗措置であることは間違いない。
 経済条項の改正について、一部に強固な反対はあるものの(特に下院では)大多数の議員が賛成の意を示している。一方、上院は、10倍以上の議員数を有する下院が上院を飲み込み、上院を廃止に追い込もうとするかのようにも見える「各院個別投票」の削除案に対し、強力な懸念と反対を示している。

― エドサの精神から下院で憲法改正に反対するマカバヤン連合
 マカバヤン連合の下院議員らは、現大統領の父親を追放した平和運動の産物である1987年憲法改正の声が高まる中、EDSAピープルパワー革命(エドサ革命)の精神を思い出すようフィリピン国民に呼び掛けた。
 2月19日の下院議会での特権演説において、ACTパーティリストのフランス・カストロ下院議員、ガブリエラ・パーティリストのアーリーン・ブロサス下院議員、そして、カバタアン・パーティリストのラウル・マヌエル下院議員のそれぞれが、エドサ革命の精神を引き合いに出し、1987年憲法の経済条項を変更する提案に反対した。

― 憲法改正とマルコス政権への反対への結束への呼びかけ
 2月25日のエドサ革命38周年記念日を間近に迎えた2月5日、憲法改正に反対する専門家や団体による連合ブハイ・アン・エドサ・キャンペーン・ネットワーク(Buhay Ang EDSA Campaign Network )が結成され、憲法改正への強力な反対の声を上げ始めている。呼びかけ人の1人、ニノイ・アキノとコリー・アキノの孫で今やフィリピンの民主主義の象徴とも目されているアキノ・ディーは、「エドサの勝利を国民に享受させた憲法を擁護せずにエドサについて語ることはできない」と語り、憲法改正の動きを強く批判した。
 さらに、2月15日には、ブハイ・アン・エドサ・キャンペーン・ネットワークやアナ・テレシア・ホンティベロス上院議員、多くの教会関係組織、学生組織が結集し、1987年憲法改正反対連合を結成した。
 ホンティベロス上院議員は、「これは真の団結です。少数の人々の利益のためだけでなく、多くの人々の利益のために戦う人々の団結です」と語り、憲法改正に反対する連合や他のグループに参加するよう国民に呼び掛けた。
 上記連合とは別に、マカバヤン連合は、2月25日のエドサ革命記念日を前に、「権力者が学ばなかった歴史の教訓」と題して次のように呼びかけた。
 「2月25日のメッセージはシンプルだ。自由と民主主義を求める闘争は続いており、集団行動がこれまで以上に必要とされている。 憲法改正によって権力の座を永続させようとする人々は、国民がそれを許さないため、ひどく失望するだろう。 マルコスは憲法を変えるあらゆる努力を放棄し、代わりに土地、生計、人権、国家主権に対する国民の要求に集中すべきである。」

― 警察は8500人を警備に動員
 フィリピン国家警察(PNP)は、2月25日のエドサ革命記念日に予定されている2つの記念式典に、「安全確保」のため約8500人の警官を動員する。国営通信社によれば、マニラ首都圏での集会に約6000人、セブの集会には2500人を派遣するという。
 「そしてもちろん、これらの数字は今後の情報次第で調整されるだろう」とベンジャミン・アコルダ・ジュニア国警長官は2月19日、マニラ警察管区のイベントで記者団に語った。

― シアン化合物利用はフィリピン人漁師を追い出すため?
 中国とベトナムの漁師が、係争中の南シナ海に位置するスカボロー礁の漁場を破壊するためにシアン化合物を使用している疑いがあると漁業水産資源局(BFAR)の当局者が2月17日に発表した。
 「フィリピン漁民によると、『中国人漁民たちは、ベトナム漁民同様にシアン化合物を利用しているとのことだ」とBFAR最高情報責任者のナザリオ・ブリゲラはケソン市で開催された土曜ニュースフォーラムで述べ、
 「加えて我が国漁民の表明するところによると、中国はフィリピン漁船がこの地域で操業するのを阻止するためにバホ・デ・マシンロック(スカボロー礁)を意図的に破壊している。」と語り、資源が豊富なラグーンの一部がすでに破壊されており、推定被害額は数十億ペソに達していることを報告した。
 2月19日、国家安全保障会議(NSC)は、スカボロー礁での外国人漁師によるシアン化合物使用疑惑を調査する予定であることを明らかにした。
 シアン化合物漁法とは、有毒なシアン化合物を珊瑚礁に投棄して魚を気絶させ、捕まえやすくする漁法のことであり、珊瑚礁や漁をするダイバーたちに破壊的なダメージを与える。

― 否定する中国
 中国外務省の毛寧報道官は、中国漁民がシアン化合物漁に従事しているというBFARの主張は「全くの捏造」であると述べた。毛報道官は、また中国政府は生態環境の保護と漁業資源の保全を重視しており、法律や規制に違反する漁業活動に対して「断固として闘う」と述べた。
 中国はスカボロー礁を黄岩島と称して領有権を主張している。
 マニラの中国大使館は声明で、フィリピンを「継続的な偽情報が海洋緊張の悪化と二国間関係の不安定化につながっている」と非難、「フィリピン政府機関報道官らの根拠のない憶測、中傷、一貫性のない発言は、彼らのプロフェッショナリズムと信頼性を疑わせるだけだ」と述べた。

〈Source〉
BFAR: Chinese, Vietnamese fishermen use cyanide in Bajo de Masinloc, Inquirer, February 17, 2024.
China calls alleged cyanide use in WPS ‘sheer fabrication’, philstar, February 20, 2024.
Coalition vs Charter change launched, Manila Times, February 15, 2024.
Eager to start charter change discussions, House lawmakers file RBH7, Rappler, February 19, 2024.
Edsa@38 – History lessons not learned by those in power, Facebook of BAYAN, February 20, 2024.
For them in 2024, there’s no forgetting the EDSA revolution, Rappler, February 13, 2024.
House leaders file bill proposing economic Cha-cha similar to Senate, Philippine News Agency, February 19, 2024.
NSC to probe foreign fishermen’s alleged use of cyanide in Scarborough, Inquirer, February 19, 2024.
Preserving Democracy: The Philippine Coalition Against Constitutional Amendment, The People’s Network, February 15, 2024.

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Painting:Maria Sol Taule, Human Rights Lawyer and Visual Artist

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