【19日=東京】体調が悪化している政治犯2人の医療費に充てる援助を求めるため、2人を担当する弁護士で、水彩画のアーティストでもあるマリア・ソル・タウレさんが、自身が描いた水彩画の作品を販売している。
タウレさんによると、2人の政治犯はアントニオ・モリーナさんとエルネスト・ジュード・リマンドさん。モリーナさんは農民で、南タガログ地域の民主的な農民運動の地域連合(KASAMA-TK)のメンバー。2019年にフィリピン最西端のパラワン島パラワン州で逮捕された。一方、全国砂糖労働者連盟(NSFW)のメンバーでもある農民のリマンドさんは、2021年にマニラ首都圏ケソン市で逮捕、国家警察のマニラ首都圏本部に拘留されているという。2人とも銃火器の不法所持と殺人容疑で逮捕された。人権擁護団体は「でっち上げの容疑で逮捕された」と批判し、2人の解放を求めている。2人は現在の公判途中で留置所に収監されているという。
─ がんと診断
モリーナさんはがんの診断を受けた。化学療法だけで、1回あたり治療費5万ペソ(約11万円、1ペソ=2.19円)かかる。一方、また、リマンドさんは肝硬変の治療を受ける必要があり、医療施設にある留置所への移送を申請している。
米国の2021年ウィリアム・D・サベル人権賞を受賞した人権監視NGOカラパタンで法律顧問を務めるタウレさんは、水彩画のアーティストとしても活動する。自由を求める人々の暮らしや美しいフィリピンの風景などを繊細なタッチで仕上げた作品を発表している。一連の作品はタウレさんのインスタグラムでもアップしている。
今回、タウレさんが販売するのは13点。10日から販売を通じた援助を呼びかけてたところすぐに半分近くが売れたという。
*水彩画の購入をご検討の方は、フェイスブックを通じて直接、タウレさんにお問い合わせください
政治犯は劣悪な環境下に置かれている。刑務所を管轄するフィリピン矯正局の統計によると、2020年10月20日時点の収容者数は定員の4倍以上。刑務所における1000人あたりの死亡率は19年の15.25人から17.89人に増加した。他方、18年の全国死亡率は5.6人だった。極度の密集状態と一日一人当たり70ペソ(約150円)の生活費の低さは死亡率を押し上げている可能性がある。
─「日本政府による援助は市民殺害のほう助に等しい」
タウレさんは2019年11月、SACが東京と横浜で実施した第2回スピーキングツアーに参加するために来日した。
11月20日から26日の間に開催された報告会では、フィリピンで発生している超法規的殺害や不当逮捕に関する現状の全体像や政策の厳罰化、軍事化について、また、超法規的殺害などの最大の被害者である農民や農場労働者らの生活や労働環境などについて詳しく説明した。
タウレさんと「日本政府によるフィリピン政府や国軍への援助は、市民殺害のほう助に等しい」「即刻、援助を中止するよう日本政府へ働きかけて欲しい」と訴えた。
〈Source〉
A Post on Maria Sol Taule’s Facebook, July 10, 2021.
Katipunan ng mga Samahang Magbubukid sa Timog Katagalugan (KASAMA-TK), Kilusang Magbubukid ng Pilipinas (Peasant Movement of the Philippines), August 12, 2010.
【活動報告】院内集会で人権状況の悪化を訴え, SAC, 2019年11月25日.
クラリッサ・シングソン, 2021, 「ネグロスからの手紙──虐殺と弾圧の島で 第3回 カリーナ、政治犯になった娘よ」『世界』岩波書店, 941: 268-273.