【18日=東京】人権NGOカラパタンなどフィリピンの人権擁護団体が、この数週間で人権侵害が激化していることを受け、人権侵害の実態をまとめた報告書をフィリピン最高裁に今週にも提出することがわかった。現地の有力メディア、インクワイアラーが18日報じた。人権擁護団体は違法な捜査で逮捕された人たちの一時的な保護を最高裁に求めるという。
― 左派系連合バヤンなどの団体や被害者らが共同提出
インクワイアラーによると、共同で提出するのはカラパタンのほか、左派系連合バヤンや教育関係者で組織する国内最大の連合組織「アライアンス・オブ・コンサーテッド・ティーチャーズ」など。政府側から「アカ(共産主義者)」とのレッテル貼りされたり、虚偽の容疑で逮捕された被害者も共同提出者になるという。
報告書には、直近で発生した人権侵害の事例として、弁護士やジャーナリスト、人権アクティビストに対する殺傷事件のほか、治安機関が実施した捜索の実態も詳しく記述しているという。「民衆のための法律家連合」も協力した。
― 「令状工場(warrant factories)」
人権擁護団体は、捜査機関が銃器や爆発物の不法所持容疑を捏造して、政府に異を唱える者たちの自宅などを家宅捜索し、逮捕する事例が頻発していると指摘する。こうした家宅捜索や逮捕の根拠になる令状は、マニラ首都圏ケソン市の特定の裁判所で発行されることが多く、その裁判所は「令状工場(warrant factories)」と呼ばれている。2019年10月末にネグロス島で未成年者10人を含む57人が逮捕された事件でも、家宅捜索の令状が、ネグロス島から遠く離れたこのケソン市の裁判所から発行されており、裁判所と国軍・国家警察との不透明な関係が指摘されていた。
〈Source〉
Report on human rights abuses sent to high court, May 18, 2021, Inquirer.
Bayan Muna questions NCRPO’s Sinas’ talks with judge who issued search warrant, November 1, 2019, Inquirer.
After QC’s Villavert, Manila judges approved searches in Calabarzon crackdown, March 7, 2021, Inquirer.