フィリピン・ニュース深掘り
(2023年6月9日-6月23日)

【写真】(左)ホセ・マヌエル・ロムアルデス在米フィリピン大使 / Afghans’ stay in PH only temporary should gov’t grant US request, pna. June 14, 2023. (右)難民受入れの経緯を追求するアイミー上院議員 / Face Book of Senator Imee R. Marcos, June 5, 2023.

*フィリピン・ニュース深掘りでは、隔週でフィリピンでの重要な出来事を一つ取り上げ、解説・深掘りします。

アフガニスタン難民受け入れに割れる?フィリピン

 最近、突如降って湧いたアフガニスタン難民の一時的な受け入れに関して、議会上院を中心にフィリピンで議論が開始されました。実は2年前のロドリゴ・ドゥテルテ政権時にもフィリピンはアフガニスタンから難民を受け入れたことがありますが、その時とは議会の反応が全く異なります。米国からのアフガニスタン難民一時受け入れ要請は、マルコス大統領の姉アイミー・マルコス上院議員により強い疑念が投げかけられ、彼女の発案により上院での調査が行われています。

― 2年前にもあったアフガニスタン難民受け入れ

 2021年8月15日、タリバンはアフガニスタン首都カブールを制圧しました。その2日後、ドゥテルテ(当時)大統領は、スポークスパーソンを務めていたハリー・ロケを通して、アフガニスタン難民を受け入れる意向を示しました。その際、ロケは、フィリピンが「太古の昔から」難民に対して受け入れる文化を有していたことを強調し、「自分の国で迫害されているために助けを必要としている人たちは、すべてここフィリピンに居場所があるのです」と力強く語りました。ドゥテルテ前大統領の発言の尻拭いばかりしていたロケさんの評価が少し上がった瞬間でもありました。
 その力強いメッセージに期待したのか、その後多種多様なルートを通して難民の問い合わせや申請がフィリピンに殺到したようです。慌てたフィリピン政府は、難民受け入れは「他国政府の要請を通した者のみ」に限られると、その門戸を思いっきり狭めてきました。「他国政府の要請」とは、フィリピン政府が言うには、信頼でき、能力のある人、将来的にフィリピンに利益になる人だけを容易に選別するということのようです。さらに、多くの人が気づいていましたが、NATO諸国からの支援も一緒に入ってくるということでもあります。フィリピン人としての自負心を掻き立てるカッコ良いロケの発言が台無しです。(ロケと似た発言は、2015年に国連難民高等弁務官(UNHCR)フィリピン事務所ベルナルド・ケルブラット代表もしているので、その引用かもしれません)

― アイミーとサラからの批判

 今回の状況が前回と大きく異なっているのは、難民のフィリピン滞在が米国へのビザが発給されるまでの一時的なもので、米国の下請のような役割であること。さらに、これまで秘匿されていたのかもしれない米国との交渉に対して、政権内部からも強い懸念や批判が表明されていることです。
 6月11日、アイミー上院議員は、6月7日に開催された大統領管理スタッフミーティングで、アフガニスタン難民の一時的な受け入れに関する米国政府からの要請について話し合われていたことを明らかにしました。この情報は、アイミー上院議員にも知らされていませんでした。そのため、「なぜ、米国からの要請を隠しているのか?」「何かフィリピン政府が隠さなければならないフィリピンに不都合な取引が隠されているのではないか?」と強い疑問を投げかけ、アイミー議員は上院議会に調査会の開催を提起したのです。
 アイミー上院議員により提起され12日から開始された上院調査会において、アイミー上院議員は、「米国が特別移民ビザ(SIV)申請者を一時的に受け入れられない、あるいは受け入れたくないのであれば、なぜグアム、プエルトリコ、グアンタナモなどの米国領土を検討せずずにフィリピンに要請するのか?」と質問を投げかけた。また、サラ・ドゥテルテ副大統領の意向を汲んで発言した教育省マイケル・ウェスリー・ポア報道官からは、「私たちは今、主に法的根拠と安全保障上の問題から、この提案全体に対して激しい異議と反対を表明したい」と明確な反対が示された。サラ副大統領は主張の詳細な説明を行なっていないが、その父ドゥテルテ前大統領は、国連の一員として受け入れに反対できないと、娘との考えの相違を述べつつも、テロに揺れる国からの無差別的な受入れが危険であるとのサラ副大統領の(考えているであろう)危惧を肯定している。

― 背後にあるのは親米 vs. 親中の内部対立?

 前回(6月9日)の「ニュース深掘り」では、親中派であるサラ副大統領およびマカパガル・アロヨ下院議員がマルコス政権内で大統領側近の立場から距離を置き始めていることについて取り上げました。
 その記事を書いた6月7日、サラは「選挙で私をボンボ・マルコスと組むように説得したのは(ロムアルデスではなくて)アイミー」と発言して、親米派であり、マルコス側近グループの中心人物であるマルティン・ロムアルデス下院議長(アフガニスタン関連の記事でもロムアルデスの名前が出てきますが、このロムアルデスは在米フィリピン大使のホセ・マヌエル・ロムアルデス(写真左)で別人です)の評価を下げ、アイミー上院議員との近しい関係をアピールしたと大衆紙が報じました。
 そして、その4日後にアイミー上院議員がアフガニスタン難民受入れを、米国従属だと暗に主張して批判しました。続いて、上院調査会においてサラ副大統領がアイミー上院議員に追随、援護したのです。
 勘ぐりすぎの可能性もありますが、今回のアフガニスタン難民受け入れをめぐる攻防もロムアルデス下院議長派閥対サラ副大統領(とアロヨ下院議員、アイミー上院議員の派閥)という親米vs親中を伴う内部対立の一連の流れの一環と捉えることもできるのではないでしょうか?
 当分は、親米と親中の政権内対立に引きずられるようにして重要な国家案件が議論されていくことになりそうです。

〈Source〉
Duterte weighs in on Afghan refugee issue, philstar, June 21, 2023.
Imee Marcos: Bare PH-US ‘deal’ on Afghan refugees, Inquirer, June 10, 2023.
Philippine officials question U.S. requests for hosting Afghan immigrants, Xinhua, June 16, 2023.
Philippines open to accepting asylum seekers from Afghanistan, Philstar, Augusta 18, 2021.
Sara says Imee Marcos, not Romualdez, pushed me to run for VP, Inquirer, June 7, 2023.
UNHCR: Hats off to Philippines for stand on refugees, ABS-CBN, May 21, 2015.
フィリピン・ニュース深掘り(2023年5月26日-6月8日):亀裂の入ったマルコス政権, SAC, June 9, 2023.

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