【24日=東京】カナダ下院国際人権小委員会は21日、フィリピン政府による人権擁護者への人権侵害を糾弾するよう、カナダ政府に求める声明を発表した。フィリピンの人権NGOカラパタンのクリスティーナ・パラバイ事務局長は昨年5月4日に開催された国際人権小委員会の公聴会で人権侵害の実例を告発したが、その後、国際人権小委員会はパラバイ事務局長がフィリピン政府当局から脅迫を受けたことを確認したため、この日、声明を出した。
声明では、フィリピン政府は国際的な人権義務に違反していると批判したほか、国際人権小委員会として、命を脅かす行為をやめるよう、フィリピン政府に求めることも盛り込まれている。
声明の主な要旨は以下の通り。
(1) クリスティーナ・パラバイ事務局長は、身の危険を冒してまで人権小委員会においてフィリピンにおける人権侵害を告発し、それがきっかけとなり同国政府当局によって脅迫を受けた。
(2) 人権小委員会は、多大なリスクを冒しても同報の人権を守るために活動する人権擁護者を称賛する。多くの国で人権が尊重されるようになったのは、人権擁護者の働きによる。
(3) 人権小委員会の公聴会では、困難な中で活動する世界中の人権擁護者を証言者として招聘している。証言者の命の危険を軽減するための追加措置を講じる予定である。
(4) 人権小委員会は、カナダ政府に対して、人権擁護者らへの侵害を糾弾するよう求める。フィリピンは市民的及び政治的権利に関する国際規約を批准しているので、国際的な人権を守る責務に違反しているといえる。
(5) 人権小委員会は、クリスティーナ・パラバイ事務局長と連帯し、彼女や彼女の仲間、同僚の命を脅かす行為をやめるよう、フィリピン政府に求める。
〈解説〉私たちが何をするのかが問われている
カナダ下院の小委員会は、証言が証言者の命の危険を高めることになるとの認識をもち、証言を真摯に受け止め、証言者の命の危険を軽減するよう動いた。
菅義偉首相は今月19日にフィリピンのドゥテルテ大統領と電話会談をしたが、フィリピンで熾烈化している超法規的殺害の停止を求めることはなかった。
カナダ下院と同様、日本でも国権の最高機関である国会の議員たちがイニシアティブを発揮し、人権に価値を置く外交を推進するよう政府に迫るべきだ。命を危険にさらしてまで訴える人びとを前に、私たちは何をするのか。国会議員にも、そして私たちにも、突きつけられた問いだ。
〈Source〉
Subcommittee on International Human Rights of the Standing, Committee on Foreign Affairs and International Development, 2021, Statement Regarding the Situation of Human Rights Defenders in the Philippines.