疑惑の中心人物逃亡で混乱/ドゥテルテ支持派らによる大規模反汚職デモ/ドラッグに依存する?大統領ファミリー
疑惑の中心人物逃亡で混乱
― 海外逃亡? 渦中のザルディ・コー下院議員
ディスカヤ夫妻の証言によって汚職疑惑の強まったザルディ・コー下院議員は、上院ブルーリボン委員会が11月7日に開催する公聴会に招聘された。しかし、公聴会前日、彼の弁護士レイモンド・フォトゥナは、コー下院議員が現在国外にいることを認めたうえで、彼は「命の危険があるため帰国できない」として公聴会出席に応じないと明言した。
同氏は、「これは逃亡ではない」と強調し、議員が関与を否定している中で、上院が「有罪を前提とした」態度で公聴会を進めていることを問題視した。
― 海外から反撃
海外「逃亡」中のコー下院議員は、11月14日に2本のビデオメッセージを自身のフェイスブックで発信した。
海外逃亡のように報じられている自身の現在の国外滞在について、「フィリピンから離れているよう指示された」と述べ、自身が「マルコス大統領から保護されている」と明言した。さらに、この国外滞在がマルティン・ロムアルデス元下院議長の指示によるものであり、ロムアルデス元下院議長はそれがマルコス大統領の命令によるものであると説明したことを暴露した。
彼は、「自分一人が槍玉に挙げられている」と主張し、また、2024年度予算に関し「マルコス大統領自身が250億ペソの挿入予算を得ていた」として、自らが指摘されている公共インフラ予算に関する挿入について、「政権中枢にも同様のものがあった」と語り、調査が偏っていると反論した。
〈Source〉
Co says Romualdez told him to stay out of PH, Inquirer, November 14, 2025.
Marcos got P25B from 2025 budget insertions — Zaldy Co, Inquirer, November 15, 2025.
Zaldy Co documents: The projects in question, and who implemented them, Inquirer, November 15, 2025.
Zaldy Co says Marcos got P25B; President ‘won’t dignify’ claim, Inquirer, November 16, 2025.
Zaldy Co won’t come home, cites threats, Inquirer, November 6, 2025.
ドゥテルテ支持派らによる大規模反汚職デモ
― イグレシア・ニ・クリスト主導の反汚職デモ
イグレシア・ニ・クリスト(INC)は、政府の透明性と説明責任を求めるために計画されていた3日間の集会を、当初の予定を1日早めて11月18日(月)に終了した。同日、マニラのルネタ公園には推定65万人の信徒と支持者が集まった。
デモの中心的スローガンは「Enormous Evil(巨大な悪)」で、参加者たちは洪水制御事業の汚職に端を発する構造的な汚職に関しての公正な調査と責任追及を求めて声を上げた。
主催者の説明によれば、集会は平和的かつ秩序あるものとなり、目標は達成されたため、月曜日での終了を決定したという。ルネタでの集会に先立ち、ピープル・パワー記念碑(ケソン市)での行進も行われた。
― 便乗するドゥテルテ陣営
一方、マルコス政権と対立するドゥテルテ支持派の複数の市民団体が、マニラのピープル・パワー記念碑に集まり、汚職問題に関する説明責任と正義の実現を求める抗議活動を行った。
ドゥテルテ支持組織としても知られる「不正に反対するボランティア(We Vow:Volunteers Opposed to Wrongdoing)」や「統一国民イニシアティブ(United People’s Initiative:UPI)」は、声明の中で「この集会は誰かに雇われたものではない。私たちは国民として正義と説明責任を要求している」と主張した。また、最近の公共事業汚職疑惑やコー下院議員の証言に基づく大統領府関係者への資金疑惑などが取り上げられ、「特定の政権を守るために真実を歪めてはならない」との声が上がった。
―「反乱に近い」
内務地方自治省(DILG)は、11月16日にピープル・パワー記念碑で行われた集会において、一部の演説者がマルコス大統領の退陣を求める発言を行ったとして、それらの発言を「反乱に近い」とし、調査を開始する方針を示した。
当局によれば、「大統領に辞任を求めるなどの発言があった」とされ、今後、集会での発言内容や発言者の責任について精査を進めるとしている。
〈Source〉
‘Close to sedition’: DILG to probe calls for Marcos ouster at People Power Monument rally, ABS-CBN, November 17, 2025.
‘Enormous evil’: Thousands rally in the Philippines over corruption scandal, Aljazeera, November 16, 2025.
Iglesia ni Cristo members to call for gov’t transparency at 3-day Manila rally, ABS-CBN November 16, 2025.
INC ends supposed 3-day rally Monday, draws massive crowd at Luneta, Inquirer, November 18, 2025.
Pro-Duterte groups call for accountability, justice in protest at People Power Monument, ABS-CBN, November 17, 2025.
ドラッグに依存する?大統領ファミリー
― 反汚職集会で「ドラッグ使用」を暴露するアイミー
11月17日、イグレシア・ニ・クリストの主催する反汚職集会の壇上に立ったマルコス大統領の姉アイミー・マルコス上院議員は、汚職と大統領ファミリーのドラッグ使用を結びつけ、大統領ファミリーを直接的に批判した。
「ボンボンと私が子どものころから、家族はすでに彼の(ドラッグを使用している)ことを分かっていました。」
「彼が年齢を重ねるにつれて、事態(ドラッグの使用)はより心配なものになりました。」
アイミーは、さらに、大統領の家族もドラッグを利用し、アイミーの家族にまで薬物を薦めていること、母イメルダがそのことを嫌っていることを大衆の前で暴露し、薬物により正しい判断をすることができなくなっていると語った。
最後に彼女は、マルコスに大統領の地位を返上して家に帰り、できるだけ早く治療を受けるよう勧める言葉で締め括った。
―「価値のない作り話」
大統領府のクレア・カストロ次官補は18日の記者会見で、アイミー上院議員のドラッグ関連の発言を「価値のない作り話だ」と述べた。彼女は、マルコス大統領が2021年の大統領選挙キャンペーン中に受けた薬物検査で陰性だったことを根拠に挙げた。
マルコス大統領は過去にもドラッグ使用の疑惑に直面したことがある。前大統領ロドリゴ・ドゥテルテは、ダバオ市長時代に提出された麻薬取締機関のいわゆる「ナルコ・リスト(ドラッグ関与者リスト)」にマルコスの名前が含まれていたと発言したが、これはフィリピン麻薬取締庁(PDEA)によって否定されている。
―「政治的動機」
アイミー上院議員に直接批判された彼女の甥でマルコス大統領の長男のサンドロ・マルコス下院議員は、自身のフェイスブックでドラッグ使用発言に対して次のように反論した。
「彼女が政府を不安定化させ、自らの政治的野心を推し進めるために、虚偽の網に頼るような低次元な行動に出たことを見て、私は深く心を痛めています。ボンボン・マルコス大統領とファーストレディに対する、これまで繰り返されてきた告発に加えて、今回は初めて私自身にも向けられたこの種の主張は、事実無根であるばかりか、極めて無責任なものです。上院議員が述べたすべてのことには、根拠がなく、真実ではなく、国民にとって何の益もありません。」
〈Source〉
Imee calls brother President Bongbong Marcos, First Family ‘drug addicts’, Rappler, November 17, 2025.
Philippines’ Marcos rejects estranged sister’s claim of drug use, Reuters, November 18, 2025.
Sandro Marcos denies drug use, says Imee’s remarks ‘irresponsible’, Inquirer, November 18, 2025.
Sandro Marcos on aunt Imee: No act of a real sibling, Inquirer, November 19, 2025.

