フィリピン政経フォーカス(8月11日-8月26日)

【写真】ブラカンの「幽霊事業」疑惑地を視察するマルコス大統領/via Marcos open to dialogue to resolve flood control issues – Palace, Philippine News Agency, Augus 27, 2025.

― 進む調査
 7月末に複数の台風と季節性モンスーンが襲来し、30人以上が死亡、20万人超が被災した。洪水対策プロジェクトの多くが機能不全または「幽霊事業」であったとして、マルコス大統領は、これらが政府関係者や請負業者による資金横領の結果と断言した。
 マルコス大統領の意向を受ける形で、8月半ばより汚職や違法行為に関しての調査権限を有するブルーリボン委員会が、ロダンテ・マルコレタ委員長のリーダーシップの下、問題の調査究明に乗り出すこととなった。
 また、会計監査委員会(COA)は、特にブラカン州に集中する事業の異常を受け、不正に関する監査を発動した。

― 主な疑惑事例
 ブラカン州は国家災害リスク軽減管理評議会(NDRRMC)によりフィリピンで最も洪水リスクが高いとされる地域の一つだ。しかし、上院公聴会では、実際の危険地域に必要なインフラが届いておらず、「不要な箇所」での工事が優先された疑いが浮上した。アーウィン・トゥルフォ上院議員は、ブラカンの特定地域で実際に「バイパス道路や排水設備の施工が行われていないにもかかわらず、完了済みと記録されている」と指摘した。これは典型的な「幽霊事業」の可能性を示唆しており、地方自治体と業者との癒着、予算の横流しの疑惑が高まっている。さらに、現地住民からも実際の工事の実態がないとの証言が寄せられている。
 また、洪水対策事業の予算が、実際に洪水リスクの高い地域ではなく、与党系政治家の地盤など特定の地域に多く配分されていた事実も判明した。セブ、イサベラ、アルバイなどが大きな予算を受け取っているが、いずれもNDRRMCの「洪水多発地域トップ10」には入っていない。これは政治的便宜供与の疑いを生み、税金の非効率な使用として批判されている。上院ではトゥルフォ上院議員がこの点を「資金の浪費」と指摘した。
 さらに、請負企業の中には、自社では工事能力を持たず、他の企業に工事を丸投げする「ライセンス貸出」業者まで存在することがわかった。アイミー・マルコス上院議員は、建設業者の中に「AAAライセンス」を保有していることになっているが実態のない企業が含まれているとし、建設業者登録との不整合を追及した。これは品質管理の欠如と汚職の温床となり得る。

― 出席拒否と説明拒否
 8月14日に開催された上院ブルーリボン委員会の公聴会では、公共事業道路省(DPWH)だけでなく、関係する主要契約業社15社を召喚していたが、そのうち公聴会に現れたのは7社に過ぎなかった。残りの8社は欠席の正当な理由を示していない。欠席した企業のうち、特に、Topnotch Catalyst BuildersやAlpha & Omega Gen. Contractorなどの企業は、億単位の契約を受注していたと報じられている。
 ブルーリボン委員会のマルコレッタ委員長は、召喚状の発行を通じて出席を義務づける構えを見せている。

〈Source〉
COA orders immediate check of Bulacan flood control projects amid fraud audit, Inquirer, August 26, 2025.
DPWH, DBM explain flood control allocations in non-flood-prone areas, Philippines News Agency, August 19, 2025.
Imee Marcos: Of top 15 flood control project contractors, 9 not actual contractors | ANC, ANC, August 19, 2025.
Top contractors no-show at Senate flood control probe, philstar, August 20, 2025.

― 300人を超える犠牲者がICC裁判への参加を申請
 8月24日、国際刑事裁判所(ICC)は、フィリピンのドラッグ戦争に関する捜査において、303人の犠牲者家族が被害者参加制度に基づいて審理への関与を申請したと発表した。この制度により、犠牲者や遺族は証拠の提出や意見表明を通じて裁判手続きに関わることができる。
 申請を受理したのは、ICCの「被害者参加・補償部門(VPRS)」。VPRSは、被害者の意見と懸念に関する報告書を、9月27日までに予審部第1部に提出するよう指示された。

― サラ海外渡航費を巡る疑義
 8月12日、大統領府のクレア・カストロ報道官は、クウェートを訪れていたサラ副大統領の頻繁な海外渡航に関して、次のように述べた。
 「(副大統領の)渡航でフィリピンの問題は解決しない」
 カストロ報道官の批判に対して、副大統領府は、「副大統領は、国内外における外交的・社会的な行事への参加を通じて、フィリピン国民の利益を促進する義務がある」と述べ、クウェート渡航がその職責の一環であると強調した。また、渡航のための適切な許可手続きがなされており、公金の不正使用もないとした。

― 教育を巡る舌戦
 8月17日、サラ副大統領は、フィリピンの教育システムが依然として旧いレベルで停滞しており、他国がロボット工学やコーディングなど先進的な教育を行っているのに、フィリピンは時代遅れになっていると発言した。彼女は、「フィリピンの学校は”紙と鉛筆”の段階に留まっている」と語り、教育の近代化の必要性を強調した。
 サラ副大統領の教育制度に対する批判に対して、8月20日、カストロ大統領府報道官は、「教育制度を批判する今の姿こそ、教育長官としての彼女自身が“完全な失敗”だったことを示している」と厳しく非難。「2022年から2024年まで、副大統領には教育長官として問題解決の機会と信頼が与えられていた。その期間に彼女が問題を改善できなかったことを、今、批判として述べること自体が矛盾だ」と語った。さらに、現教育長官であるソニー・アンガラが未解決の課題に取り組んでいるとも述べている。
 この批判を受けて、サラ副大統領は自身のSNSで「私は完全な失敗ではなかった」と述べ、教育長官として取り組んだ各種改革を挙げて、自らの実績を擁護した。

〈Source〉
ICC moves forward with Duterte case as victim applications are submitted, ABS-CBN, August 23, 2025.
More than 300 apply to participate in Duterte ICC case as drug war victims, ABS-CBN, August 23, 2025.
Palace to VP Sara: Your trips won’t solve PH problems, GMA News Online, August 12, 2025.
OVP: Sara Duterte’s Kuwait trip ‘lawful, aligned with mandate’, Inquirer, August 17, 2025.
Palace: Sara a ‘failure’ at DepEd, Daily Tribune, August 21, 2025.
Philippines education stuck in ‘paper and pencil’ – VP Sara, philstar, August 18, 2025.
Solon agrees with VP Sara Duterte: Let’s release all travel docs, Inquirer, August 12, 2025.

― フィリピンの主張:中国側による危険な追跡行動の結果
 8月11日、南シナ海のスカボロー礁付近において、中国海軍軍艦と中国海警局巡視船との間で衝突事故が発生した。
 フィリピン国軍の発表によれば、中国の軍艦と巡視船は、フィリピン沿岸警備隊の巡視船とフィリピン漁船を追跡する最中に接触し、海警局巡視船の艦首部分が大破する事態となった。ロメオ・ブロウナー将軍は、中国艦船による追跡行動がきわめて危険であったと述べ、「我々はフィリピン漁民を守るために(必要な場所に)いただけだ」との立場を強調した。また、現場でフィリピン側は救助の申し出を行ったが、中国側から応答はなかったという。フィリピン政府はこの事件を「中国によるフィリピンの主権への重大な挑戦」として中国を非難した。

― 中国の主張:フィリピン側の妨害による衝突
 一方、中国側は、衝突の責任はフィリピン側の「危険な操船」にあると主張した。中国の専門家の見解として、フィリピン巡視船はスカボロー礁周辺に高速で進入し、中国艦船の航路を妨害した結果、衝突が避けられなかったとされる。中国国防省も「フィリピン側の挑発行動に対して、我が国は正当かつ必要な対応を取った」と述べ、領海保全のための合法的措置だったと強調した。

〈Source〉
Collision of Chinese vessels in waters near China’s Huangyan Dao likely caused by avoiding hitting Philippine Coast Guard Ship: expert, Global Times, August 15, 2025.
Philippines blames China for ship collision in disputed South China Sea, AP News, August 13, 2025.

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