フィリピン政経フォーカス (3月4日-3月20日)

【写真】オランダからSNS発信を活発化するハリー・ロケ/以下の資料より筆者作成 Facebook of Harry Roque, March 19, 2025. Facebook of Harry Roque, March 20.

― 非常に早い初回審理
 3月14日、国際刑事裁判所(ICC)は、ロドリゴ・ドゥテルテ前フィリピン大統領(以下、ドゥテルテ)に対する初回審理を実施した。 ドゥテルテは、フィリピン国内での逮捕後、すぐにオランダ・ハーグのICC拘置所に移送されていた。長時間の移送を考慮し、初回審理では、オンラインでの出廷が認められた。 
 審理では、ドゥテルテの氏名や生年月日などの身元確認が行われ、起訴内容の説明がなされた。具体的には、彼のダバオ市長時代および大統領在任中の「ドラッグ戦争」における強硬な取り締まりに関連する人道に対する罪が指摘された。なお、この日の審理では、罪状認否は行われませんでした。 

― ドゥテルテ弁護団の批判
 3月14日のICC初公判で、ドゥテルテの弁護団は、彼の逮捕およびオランダへの移送を「純粋で単純な拉致」と強く非難した。 弁護団は、ドゥテルテが難聴や視力低下などの健康問題を抱えており、公正な審理を受ける能力に疑問があると主張した。これに対し、ICC側は裁判所の医師がドゥテルテを診察し、精神的にも身体的にも問題はないと判断したと述べた。
 さらに、弁護団はドゥテルテの逮捕状の合法性に異議を唱え、彼の逮捕時に弁護士が同席していなかったことを指摘した。 また、逮捕に際してドゥテルテが指紋採取を拒否し、警察官に対して法的措置を取ると脅したことも報告されている。 これらの主張は、ドゥテルテの権利が侵害されたとする弁護側の立場を強調するもであった。

― 専門家の分析
 ICCに認定されたフィリピンの弁護士5人のうちの一人、ジョエル・ブトゥヤンによると、ドゥテルテの有罪を証明するための「圧倒的な証拠」がすでに揃っているという。これらの証拠には、ドゥテルテが大統領在任中およびダバオ市長時代に行ったとされるドラッグ戦争に関連する超法規的殺害の詳細な記録が含まれている。証人の証言や公式文書に加え、ドゥテルテ自身が公の場で「ドラッグ犯罪者を殺せ」と発言した映像や録音も強力な証拠として提出されている。
 ブトゥヤンは、ドゥテルテ自身の過去の発言が彼の弁護にとって不利に働いていると指摘した。特に、彼が自ら殺人を認めるような発言をしたケースが多数あり、ICCの検察側はこれを有力な証拠として扱っている。弁護団は、ICCの管轄権を否定し、フィリピン国内の司法制度を根拠に裁判の正当性を争う姿勢を示しているが、ICC側は「人道に対する罪」は国際法に基づいて裁かれるべきだと主張している。
 この裁判は、アジア地域における国家元首の責任追及のモデルケースとなる可能性があり、国際社会の注目を集めている。ブトゥヤンは、有罪判決が下る可能性が高いと予測しており、その結果がフィリピンの政治情勢や国際司法の枠組みにどのような影響を与えるかが注目されている。

〈Source〉
Duterte provided ‘overwhelming evidence’ for his conviction: expert, ABS-CBN, March 17, 2025.
Duterte takes responsibility for Philippines drug war, anticipates long ICC battle, Reuters, March 13, 2025.
Philippine ex-President Duterte appears by video link at International Criminal Court hearing, AP, March 14, 2025.
Rodrigo Duterte appears at ICC hearing in The Hague by video link, Guardian, March 14, 2025.

― 結成された弁護団
 3月17日、サラ副大統領は、ドゥテルテ前大統領がICCによる捜査に対応するため、新たな弁護団を結成したことを明らかにした。主任弁護人には、国際法の専門家であり、過去に複数の国際裁判で被告を弁護した実績を持つイスラエルのニコラス・カウフマンが選ばれた。彼を補佐する形で、フィリピンの元行政長官サルバドール・メディアルデアや元大統領報道官ハリー・ロケが弁護団に加わることとなった。
 ドゥテルテとその弁護団は、フィリピンには独自の司法制度があり、ICCの介入は不当であると主張している。弁護団は今後、ICCの管轄権に異議を申し立てる方針であり、国際法廷での法的な争いが本格化する見通しである。

― 役に立たないハリー・ロケ
 3月17日、POGOに関する下院調査において侮辱罪で告発されており、国外に逃亡しているとされるロケは、記者会見において、ドゥテルテをできるだけ早くフィリピンに帰国させるため、必要なすべての手段を講じると述べた。 ロケは、ドゥテルテの弁護団の一員として活動しており、ドゥテルテが釈放されるまで帰国しない意向を示した。
 しかし、その翌日、ハーグ滞在中のサラ副大統領は、(フィリピンから逃亡中の)ロケがオランダで弁護団に正式に加わると法的な問題で混乱することになるため、彼を正式な弁護団の一員に加えていないことを説明した。
 このサラの発言を受け、下院議員はロケに対して、できることはないのだからフィリピンに戻り、逃げずにPOGO調査に協力するよう要請した。

― 主張を一転させるデラロサ
 ロナルド・デラロサ上院議員は、ICCによる逮捕状が発行された場合、身を隠すことを検討していると述べた。 彼はつい先日まで、ICCからの逮捕状が出れば自ら出頭する意向を示していたが、現在は「なぜ自首しなければならないのか」と述べ、立場を変えている。 デラロサ上院議員は、自身が「隠れているわけではない」と語りつつもフィリピン国内の秘密の場所にいることを明かし、具体的な所在については言及を避けている。
 ICC弁護士クリスティーナ・コンティは以前、デラロサともう一人の元国家警察長官オスカー・アルバヤルデが、前政権のドラッグ戦争における役割に関して、人道に対する罪で ICC から次に逮捕状を受け取る可能性があると語っている。

― ドゥテルテ逮捕に対して上院調査を開始するアイミー
 アイミー・マルコス上院議員は、ドゥテルテ逮捕に関する上院調査を開始すると発表した。彼女は、ICCの命令に基づく逮捕が、フィリピンの主権や法制度にどのような影響を与えるのかを明確にする必要があると主張している。
 アイミーは、政府がどのような法的手続きに従って逮捕を実施したのか、またドゥテルテの権利が適切に保護されたのかを検証する意向を示した。さらに、ICCの捜査に協力した政府関係者や機関が、フィリピンの司法制度を迂回して国際裁判に加担したのではないかという疑念についても調査すると述べている。
 この調査は、フィリピン国内でドゥテルテの逮捕に対する反発が高まる中で行われることになり、政権与党とドゥテルテ派の間で緊張が高まる可能性がある。アイミーは、政府の対応の透明性を確保することが目的であり、国民に真実を伝える必要があると強調した。

〈Source〉
Dela Rosa says he’s in secret PH location, Inquirer, 19, 2025.
Duterte assembles defense team with international law expert as lead counsel, ABS-CBN, March 17, 2025.
Harry Roque not part of Duterte’s defense team at ICC – VP Sara, Inquirer, March 19, 2025.
Imee Marcos to launch Senate probe into Duterte arrest, ABS-CBN, March 17, 2025.
Palace to Harry Roque: ‘Defend yourself first before defending others’, Inquirer, March 19, 2025.
Roque vows to bring Duterte back home, Inquirer, March 17, 2025.

― 情報提供を渋るマレーシア政府
 ヘスス・クリスピン・レムリア司法長官は、解任された元バンバン町長アリス・グオの昨年7月の国外逃亡に関して、マレーシア政府が情報提供を拒否していると明らかにした。レムリア司法長官によれば、マレーシア側はグオがどの航空機に搭乗し、どのように入国したかの情報を把握しているものの、提供を拒んでいるとのこと。この背景には、スールー王族の土地紛争に関する問題が影響しているとされている。
 フィリピンとマレーシアの間でサバ州の領土問題が未だ解決しておらず、情報の共有を控える傾向がある。

― 「裏口」ルート
 国家情報調整局(NICA)のフェルル・シルビオ局長は、グオとその兄弟がフィリピン南部の「裏口」ルートを通じてコタキナバルに出国し、その後クアラルンプールを経由してバタム島(インドネシア)に向かった可能性があると述べている。これは、グオの妹とされるシエラ・グオがコタキナバルに入国した記録に基づく推測だ。 
 フィリピン移民局は、元大統領報道官ハリー・ロケがグオと同じルートを使ってフィリピンを離れた可能性があると指摘している。しかし、具体的な証拠は示されていない。

〈Source〉
Hontiveros warns BI of revamp for still not knowing how Alice Guo escaped, ABS-CBN, March 4, 2025.
Remulla says Malaysia withheld cooperation on BI’s efforts to find Alice Guo, ABS-CBN, March 19, 2025.

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