フィリピン政経フォーカス(12月11日-12月25日)

【写真】最新の世論調査で評価を下げた上位政治家(以下のwikipedia資料より筆者作成) マルコス大統領(左上) https://en.wikipedia.org/wiki/Bongbong_Marcos ロムアルデス下院議長(左下)https://en.wikipedia.org/wiki/Martin_Romualdez エスクデロ上院議長(右上)https://en.wikipedia.org/wiki/Francis_Escudero サラ副大統領(右下) https://en.wikipedia.org/wiki/Sara_Duterte

― 上位政治家評価
 世論調査パルスアジアは11月26日から12月3日に実施した最新の政治家に対する世論調査の結果を発表した。
 上位政治家である大統領、副大統領、上下院議長の評価は前回9月の結果より軒並み下落した。特に、衝突が激化しているサラ副大統領とロムアルデス下院議長がともに評価を大きく下げている。

 【評価する割合】
マルコス大統領   :50 → 48
サラ副大統領    :60 → 50
エスクデロ上院議長 :60 → 53
ロムアルデス下院議長:32 → 25
 【評価しない割合】
マルコス大統領   :21 → 25
サラ副大統領    :17 →  28
エスクデロ上院議長 : 8 →  9
ロムアルデス下院議長:24 → 32
(政治家への評価は、評価する、どちらとも言えない、評価しない、の3つの選択肢から選択される)

― 2025年選挙予想
 2025年5月の上院議員での当選圏内の投票議員の人気順位は以下の通り。前回から順位に多少の変化は見られたが、大きな変化はない。相対的に大きな変化があったのは、元プロボクサーのマニー・パッキャオ元上院議員で、順位を4つ上げた。

1.  エルウィン・トゥルフォ
2.  ティト・ソット
3.  ボン・ゴー
4.  ベン・トゥルフォ
5.  ピア・カエタノ
6.  マニー・パッキャオ
7.  ピン・ラクソン
8.  ウィル・レビラメ
9.  ボン・レビリア
10. アビー・ビナイ
11. リト・ラピッド
12. アイミー・マルコス
13. バト・デラロサ
14. カミール・ビラール

赤字はマルコス陣営の支持する上院議員候補)

〈Source〉
フィリピン・ニュース深掘り 動き出す次期上院選挙候補者たち(2)マルコス政権が支持する次期上院選候補者の見どころ, Stop the Attacks Campaign, 2024年10月11日.
November 2024 Ulat ng Bayan Senatorial Pre-Election Preference probe Electoral Survey, Pulse Asia, December, 2024.
‘Political brawl’ behind drop in approval, trust ratings of Duterte, Marcos, ABS-CBN, December 23, 2024.
Pulse Asia Research’s November 2024 Ulat ng Bayan Survey:Media Release on the Performance and Trustworthiness Ratings of the Top Philippine Government Officials and the erformance Ratings of the National Administration, Pulse Asia, December 2024.
Pulse Asia Research’s November 2024 Ulat ng Bayan Survey:Media Release on the Performance and Trustworthiness Ratings of the Top Philippine Government Officials and the erformance Ratings of the National Administration, Pulse Asia, September, 2024.
VP Sara Duterte’s trust rating dips 12 points in November poll — Pulse Asia, ABS-CBN, December 21, 2024.

― 下院の告訴勧告
 12月18日、下院四委員会合同委員会(クアッドコム)は、前政権のドラッグ戦争中に生じたとされる超法規的殺害(EJK)に関連し、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領、クリストファー・ゴー上院議員とロナルド・デラロサ上院議員、その他の警察関係者らを、人道に反する罪で告訴するよう勧告した。
 クアッドコムのロバート・バーパーズ委員長(北スリガオ州選出)は、EJK、違法薬物、違法オフショア賭博運営業者(POGO)に関する13回にわたる下院公聴会に基づき、証拠、証言、立法勧告を概説した43ページの進捗報告書を提出した。
 下院は本会議でクアッドコムの報告書を採択した。
 告訴は、国際人道法、大量虐殺、その他の人道に反する罪に関するフィリピン法として知られる共和国法第9851号第6条に基づいて行われる。

― 報告書の主張
 バーバーズ委員長によると、ドゥテルテ前大統領は11月13日の公聴会で、いわゆるダバオ暗殺部隊の存在や、EJKに関与した警察官に対するダバオの報奨制度など、政権のドラッグ戦争の主要要素を認めたという。
 また、ドゥテルテ大統領は、違法薬物との血なまぐさい戦争の「完全な法的責任」も負っていると述べた。
 同委員長は、さらに、以下の点が公聴会によって明らかになったと述べる。

・公聴会で、元フィリピン国家警察警官ロイナ・ガルマは、EJKへの関与に対して警察官に報酬を与えていたとされるいわゆる「ダバオモデル」の詳細を明らかにした。
・ガルマはまた、ダバオ暗殺団の存在と、ドゥテルテ前大統領の命令によりダバオ刑務所内で中国人麻薬王3人が処刑されたとされる件についても証言した。
・POGOと違法薬物、マネーロンダリング、その他の犯罪行為とのつながりも明らかにした。
・中国人麻薬王ウィリー・オンとつながりのあるエンパイア999リアルティ社などの企業は、土地や資産を取得するために偽造文書を使用していたことが判明した
・さらに調査を進めると、ドゥテルテ前大統領の息子のパオロ・ドゥテルテ下院議員、サラ・ドゥテルテ副大統領の夫であるマナセス・カルピオ、そして元経済顧問のマイケル・ヤンを含むドゥテルテ前大統領の盟友が違法薬物密輸に関与していたことが判明した。

― 立法勧告
 クアッドコムはこれまでに、EJK、違法薬物、および関連犯罪に対処する4つの法案を提案している。これらの法案において、EJKを凶悪犯罪に分類すること、あらゆる形態のPOGOを禁止すること、外国人が違法に取得した財産の民事没収を可能にすること、偽造された出生証明書の行政的取り消しを許可することなどについて言及されている。
 クアッドコムの報告書は、ドゥテルテ政権時代に悪用された立法上の欠陥に対処するため、地方自治法、マネーロンダリング防止法、証人保護法など、多数の法律の改正を求めた。
 さらに、違法薬物の問題に関して、バーバーズ委員長は死刑の復活を勧告した。
 クアッドコムはまた、EJKを調査するための省庁間組織の設立、およびフィリピン国家警察の内部調査部を独立した自治機関として設立することを勧告した。

〈Source〉
Marcos: Let DOJ handle House move vs Rodrigo Duterte, Inquirer, December 20, 2024.
Quadcom endorses crimes vs. humanity case against Duterte, 2 senators, Philippines News Agency, December 18, 2024.
Rappler Recap: House wants Rodrigo Duterte sued for crimes against humanity, Rappler, December 18, 2024.

― 中距離ミサイルシステム配備を計画中
 12月23日、フィリピン軍は、近い将来に中距離ミサイルシステム(MRC)を取得して国の防衛力を強化する計画だと発表したが、今年初めにフィリピンに配備され中国を怒らせた米国製のタイフォンについては言及しなかった。米軍は昨年4月、マニラとワシントンの間で行われた一連の大規模軍事演習のために、台湾に面したフィリピン北部にタイフォンを配備した。
 これは、アジア太平洋地域における米国の兵器システムの初の配備であり、中国を激怒させた。それ以来、フィリピン国軍は同システムの運用訓練にこのタイフォンを使用してきた。中国政府は、配備により「地政学的対立が激化し、地域の緊張が高まった」として、演習以来配備されたままになっている米国のミサイルを、フィリピンから撤退させるよう要求している。
 陸軍司令官ロイ・ガリド中将は、国の主権と排他的経済水域(EEZ)を守るためMRCの取得計画が進行中であると述べた。
 「包括的群島防衛構想(CADC)*の実施において実現可能性と機能性が認められたため、取得を計画している」と、彼はタギッグ市陸軍本部での記者会見で述べた。
 「我が国の主権を守るために、陸軍がこの能力(中距離ミサイルを利用して群島を防衛する能力)を開発していることを国民に報告できてうれしく思います」と述べ、取得される総数は「経済性」次第だと付け加えた。
*CADCは、フィリピン政府がフィリピンの370キロメートルのEEZと管轄下の他の地域全体に軍事力を投射することを要求する防衛戦略のこと。

― 中国政府のコメント
 12月23日、フィリピン政府がタイフォン中距離ミサイルシステム獲得の計画の公表を受け、同日の記者会見でメディアと報道官の間で以下の質疑が行われた。

(AFP通信社)
「 フィリピン軍は本日(12月23日)、自国の海洋権益を守るため、米国のタイフォン・ミサイル・システムを取得する計画であると述べています。これについて中国政府からコメントはありますか?」
(毛寧報道官)
「中国は、米国がフィリピンに中距離ミサイルシステムを配備することに断固反対します。我々は何度もこのことに明確に反対を示してきました。フィリピンがこの戦略的攻撃兵器を持ち込むことは、域外の国がこの地域の緊張と対立を煽り、地政学的対立と軍拡競争を煽ることを可能にするものです。このような動きは挑発的で危険であり、自国民や東南アジア諸国の人々、歴史、そして地域の安全保障に対して、極めて無責任な選択です。この地域に必要なのは平和と繁栄であり、ミサイルシステムや対立では決してありません。私たちは、フィリピンが地域諸国とその国民からの呼びかけに耳を傾け、一刻も早く誤った行いを正し、公約通りタイフォン・ミサイル・システムを速やかに撤退させ、これ以上誤った道を歩まないよう、改めて強く求めます。」

〈Source〉
Army wants mid-range missiles for PH defense, Inquirer, December 24, 2024.
Foreign Ministry Spokesperson Mao Ning’s Regular Press Conference on December 23, 2024, Ministry of Foreign Affairs the people’s Republic of China, December 23, 2024.

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