下院による調査/2度目の弾劾/再度加熱する?南シナ海
下院による調査
― サラ機密費
教育省から提出された機密費に関する領収書の署名者は、5人のうち3人が「存在しない」ものだった
下院グッドガバナンス委員会ジョエル・チュア委員長は、12月9日にサラ副大統領の予算利用に関する調査の結果について公表した。実際、同委員会は、領収書に記載された677人の署名について統計局の登録情報と付き合わせ、405人が出生証明書を持っていない、存在していないことを確認した。
機密費に関しては、サラ副大統領のセキュリティ責任者である現役の軍関係者2名の名前が機密費管理者として新たに出された先の調査で明らかにされた。レイモンド・ダンテ・ラチカ大佐とデニス・ノラスコ大佐である。彼らに関する本格的な調査は、これからである。
― 年末で一区切りする調査
また、12月8日、四委員会合同委員会のロバート・エース委員長は、クリスマス休暇前にこれまで調査してきた違法ドラッグ、超法規的殺害、POGOに関して、その途中経過を報告書としてまとめ、本会議に提出すると語った。経過報告書を急ぎ提出するのは、今後の特に超法規的殺害やPOGOに関する立法措置を促進するためだ。
チュア委員長をはじめとする複数の下院議員は、サラ副大統領の弾劾手続きの推進が多くの重要な法案を遅延させることから、弾劾手続きの強行には否定的だ。それよりも、超法規的殺害やPOGO禁止に関する法案の通過に上下院で力を合わせるべきだと主張した。
12月10日、エース委員長は、今年の調査を終えるにあたり10人弱を調査に基づいて起訴する予定であることを明らかにした。インタビューにおいて、「現役、退職、最近退職した」役人に対して刑事訴訟および行政訴訟を提起するよう四委員会合同委員会が勧告する予定であると述べたが、名前や告訴の内容については明らかにしていない。
〈Source〉
10 retired, active execs to face POGO, EJK raps, philstar, December 11, 2024.
405 signatories of confi fund receipts under VP Sara-led DepEd ‘non-existent’, Rappler, December 9, 2024.
Quad Comm to present initial report on illegal drugs, EJK, and POGOs before session break, ABS-CBN, December 8, 2024.
フィリピン・ニュース深掘り 弾劾訴訟の注目点:実は追い込まれているのは、マルコス・ロムアルデス陣営かもしれない, Stop the Attacks Campaign, December 10, 2024.
2度目の弾劾
― 2度の弾劾根拠
12月2日に続いて、4日に2度目の弾劾申立てが下院議会に提出された。2 度目の申立書には、元議員を含む 70 名を超える署名が記されている。
憲法に規定されている副大統領弾劾の根拠は、反逆罪、収賄、憲法違反、汚職その他重大な犯罪、公共の信頼の裏切り行為の5つである。
2日に提出された最初の申立書では、弾劾訴訟に値する「憲法違反」「汚職その他重大な犯罪」および「公共の信頼の裏切り」について、24の項目、50ページにわたって説明がなされている。
4日に提出された2つ目の申立書は、次の点で「公共の信頼の裏切り」があったと主張している。
・副大統領室と教育省の機密資金6億1,250万ペソをめぐって副大統領および教育大臣としての裁量権を乱用した。
・偽造文書を裏付けとして、秘密資金の支出に関する実績報告書の作成を部下に命じ、監査プロセスを愚弄した。
・予算審議をスキップし、公的資金の使用に関する質問を避け、議会の監視機能を認めることを故意に拒否した。
申立書は、「これらの資金の使用に関する正当な質問に直面したとき、彼女は宣誓で要求されている透明性ではなく、批判者を『赤』、『テロリスト』、『共謀者』と呼んで脅迫と威嚇で対応した。 被告の行為は、単に宣誓を守らなかっただけでなく、宣誓が守るべき説明責任の原則そのものを弱体化させる積極的なキャンペーンである」とし、「被告の行為に見られる国民の信頼への裏切りは、公務員と国民の間の契約の根本的な違反であり、その違反は極めて深刻であるため、弾劾によって彼女を職務から解任し、公職に就く資格を永久に剥奪する罰則を科すことでしか是正できない」と主張した。
― 弾劾への温度差
下院議会はサラ副大統領への疑惑と調査を強めてきたが、弾劾訴訟の可能性が具体化するにつれ、議員間の温度差も明らかになってきた。
左派の下院議員が中心となり2つの弾劾申立てが立て続けに提出されたが、他方でドゥテルテ親娘の最大の競合相手であるマルコス大統領やマルティン・ロムアルデス下院議長の周辺は静観しているように見える。
一部下院議員が新たな弾劾の新たな申立書を準備している一方で、少なくない下院議員たちは時間がかかりすぎ、成功可能性も高くない弾劾訴訟の有効性に疑問を呈している。
〈Source〉
FULL TEXT: The second impeachment complaint vs VP Sara Duterte, Rappler, December 4, 2024.
Sara Duterte slapped with second impeachment complaint, Rappler, December 4, 2024.
VP Duterte faces 2nd impeach rap; Palace disowns moves, Inquirer, December 4, 2024.
フィリピン・ニュース深掘り 弾劾訴訟の注目点:実は追い込まれているのは、マルコス・ロムアルデス陣営かもしれない, Stop the Attacks Campaign, December 10, 2024.
再度加熱する?南シナ海
― 2ヶ所で衝突
フィリピンは、南シナ海の係争中の2つの浅瀬で中国が自国の船舶に対して「攻撃的」かつ「無謀な」行動をとったと再び非難した。
フィリピン沿岸警備隊(PCG)は12月4日の声明で、中国の海警局(CCG)と海軍の艦船が同日にスカボロー礁付近で高圧放水砲を発射し、フィリピンの巡視船を妨害し、側面衝突させたと主張した。フィリピンの国家海事評議会はまた、サビナ礁付近で漁業水産資源局(BFAR)の船舶が補給任務中に「CCGに横から衝突され、もう1隻も衝突された」と主張した。
日本、カナダ、オーストラリア、米国、欧州連合を含む西側諸国政府は、中国の危険な行動を公式に非難した。
― 中国側からの批判
中国共産党機関紙『人民日報』の姉妹紙『環球時報』英語版Global Timesは、今回の衝突に関して以下のような論評を公表した。
フィリピンは、南シナ海問題に関するマニラの挑発行為に対して中国が取った一連の管理措置に見られるように、領土主権と海洋権益を守る中国の決意と能力を認識すべきである。フィリピン自作自演は飽きられ、その影響力は時とともに弱まっている。
「12月4日、フィリピンはPCG巡視船、公船、漁船を派遣し、黄岩島周辺の中国領海に侵入させた。CCGは法律と規則に従って取締りを実施することで対応した」と、CCGの劉徳軍報道官は述べた。
船舶衝突事件の後、PCGは事件のビデオ映像を公開し、悪意ある編集によって中国の合法的な取締り行為を貶めようとした。しかし、中国はすぐに事態を明らかにした。劉報道官が述べたように、中国からの度重なる厳しい警告を無視し、急旋回して後退し、故意にCCG船3302に突っ込み、CCG船の安全を著しく脅かしたのはフィリピン公船3003であった。「挑発的な行動を取ったフィリピン側に非がある」と劉報道官は述べた。
「フィリピンに対し、侵害、挑発、宣伝を直ちに止めるよう警告する。さもなければ、すべての結果に責任を負うことになる」と劉報道官は述べた。
― 日本からの防衛支援(軍事援助)
日本はフィリピンの防衛能力を強化するため、16億円(約6億1100万ペソ)の政府安全保障支援(OSA)に署名し、防衛装備品をフィリピンに提供する。
署名は、上述のCCGとPCGが衝突した翌日になされた。
日本からフィリピンへの2度目となるOSAでは、RHIB(硬式ゴムボート)、沿岸レーダーシステム、その他の装備品がフィリピン海軍に提供され、海域認識能力の向上を図る。
日本は、アジア太平洋地域での中国の軍事的強硬姿勢の高まりなどの安全保障上の懸念が高まる中、受入国の防衛能力強化を支援するため、2023年4月にOSAを開始した。日本大使館は「フィリピンは南シナ海やルソン海峡などの重要なシーレーンに面しており、地域の安全保障において重要な役割を果たしている」と述べた。
フィリピン外務省は、「フィリピンの安全保障と、インド太平洋地域の平和、安定、安全に対する脅威を抑止するフィリピンの能力向上に向けた国防省とフィリピン国軍の取り組みを支援する」と述べ、「この援助は、両国が海洋の安定と地域の平和に向けて共有する決意を反映している」と付け加えた。
― 日米との合同パトロール
フィリピン、米国、日本は、係争海域における中国の上述の侵略行為を受けて、南シナ海で合同パトロールを実施した。
インド太平洋軍(Indopacom)によると、12月6日のマニラの通常の海上活動には、軍艦BRPアンドレス・ボニファシオが参加し、米軍の偵察機P-8Aポセイドンと自衛隊のむらさめ型護衛艦JSさみだれが加わった。
インドパコムは声明で、「これは、これまでの海上協同活動と継続的な協同活動に基づくもので、防衛/軍事政策、戦術、技術、手順の相互運用性を強化するものである」と述べた。
〈Source〉
Japan grants P611 million security aid to Philippines, philstar.com, December 6, 2024.
Philippines, China Again Clash at Two Disputed South China Sea Shoals, The Diplomat, December 5, 2024.
The Philippines’ self-directed South China Sea drama tiresome, Global Times, December 5, 2024.
West Philippine Sea: US, Japan join PH patrol after last China hostility, Inquirer, December 6, 2024.
West PH Sea: PH to protest China’s latest aggression in Bajo de Masinloc, Inquirer, December 5, 2024.