フィリピン政経フォーカス(9月25日-10月3日)

【写真】分裂するマルコス姉・弟?:上院選でマルコス(弟:左)の支持を拒否するアイミー(姉:右)/次の資料より筆者作成PBBM: Admin coalition still supports Imee’s reelection bid, Philippine News Agency, September 30, 2024.

― アイミー、上院選挙で弟マルコスと決裂
 「弟(マルコス大統領)はただでさえ何が起こるか不安な状況の中にいるので、弟が困難な状況に陥らないように、また弟を危険にさらしたり友達(ドゥテルテ・ファミリー)を傷つけたりしないように、独立して立候補するのは本当に大変ですが、私は(陣営から離れた立場で)個人として出る方が良いと考えています。」
 9月30日、記者からの質問に対して、マルコス政権が支持する上院議員候補者リストに挙げられていたアイミー・マルコス上院議員は、2025年上院選挙でマルコス政権の支持候補者ではなく無所属で出馬する意向を改めて語った。
 アイミー上院議員は、母イメルダ・マルコスが病床でマルコス大統領とアイミー上院議員の分裂を悲しんでいることについて触れ、自身こそが国の統一(ユニチーム)の意思を継ぐものであることを暗に記者団に告げた。
 同日、マルコス大統領は、記者団に対して、アイミーの意向を知った上で、それでもマルコス政権がアイミーの上院選挙を支持する意向を示した。

― 新たなフィリピンのための同盟
 9月28日、官邸は、マルコス政権が支持する2025年上院議員選挙候補者「新たなフィリピンのための同盟」12人のリストを公表した。候補者は以下の通り。
 アイミー・マルコス 上院議員(現職)(辞退の見通し)
 ベンハミン アバロス・ジュニア 内務自治長官
 アビー・ビナイ マカティ市長
 ピア・カエタノ 上院議員(現職)
 リト・ラピッド 上院議員(現職)
 エルヴィン・トゥルフォ ACT-CIS代表
 フランシス・トレンティノ 上院議員(現職)
 マニー・パッキャオ 元上院議員
 ティト・ソット 元上院議長
 ボン・レヴィリア 上院議員(現職)
 パンフィロ・“ピン”・ラクソン 元上院議員
 ミール・ヴィラール 下院議員(ラス・ピニャス選出)

― 中国スパイの8ステップ
 カタールのドーハに拠点を置くメディア、アルジャジーラのドキュメンタリー番組が、アリス・グオと中国スパイや違法なオフショア賭博運営会社(POGO)との関係を明らかにするための下院調査委員会において上映された。この番組は、近頃タイで投獄された大物中国人シェ・ジージャンの保有する書類からアリス・グオの名前の入った書類が発見されたことを取り上げている。
 この番組は、また、世界中で確認されている中国スパイについて、活動を定着させるための共通する以下8段階の手順について解説しており、グオの状況に似通っていることから調査する下院議員たちの関心を集めている。
 ステップ1:活動する国を選定する
 ステップ2:資金調達を助けてくれる中国人を探す
 ステップ3:工業団地を見つける
 ステップ4:地元住民を利用してダミー企業を設立する
 ステップ5:政府有力者の協力を得る
 ステップ6:合法的と見える企業を統合する
 ステップ7:その企業の周りに重層的な企業連携を作る(資金の流れを見えにくくする)
 ステップ8:あらゆる違法行為が生じる

― 激怒するグオ
 ドキュメンタリーのインタビューにおいて、シェは、中国のスパイの存在を確認する書類を持っており、その中に「グオ・フア・ピン」の名前も含まれていると語った。これはアリス・グオの本名とされている。
 この書類によると、彼女の住所は中国福建省にある。ドキュメンタリーは、その住所が中国共産党の地方事務所であることを突き止めた。シェは、さらに、グオから2022年にバンバン町長に立候補するための選挙運動の資金援助を求められたことを語っている。
 このドキュメンタリーに対して、グオは怒りを露わにし、アルジャジーラを訴えると強く語った。

― 明らかになるドゥテルテ幹部のPOGO関与
 ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の経済顧問であったミカエル・ヤンの兄トニー・ヤン(本来の名前はヤン・ジアン・シン)は、フィリピン国籍を違法取得し、東ミサミス州でフィリピンのPOGOを所有していたとされる鉄鋼製造会社を含む複数の会社を設立したことを認めた。
 POGO関連の犯罪に関する上院調査委員会の公聴会で証言したトニーは、中国で生まれたが、問題が多く汚職まみれの出生遅延登録制度を通じてフィリピンの出生証明書を取得できたことを認めた。
 彼は、偽国籍を利用してフィリピン人しか取得できない多くの特権を享受してきたことについては認めたものの、POGOとの関係については否定を続けている。
 公聴会に出席したフィリピン反組織犯罪委員会(PAOCC)ギルバート・クルーズ次官は、ヤンが東ミサミス州に自分たちの「王国」を築き、違法行為を隠蔽したと述べた。
 クルーズによると、カガヤン・デ・オロ市で事業を始めたい人は、まずヤン兄弟の許可を得なければならない。彼は、ヤンが広大なフィビデック工業団地を事実上支配していると指摘した。 「マイケルの方が目立っているが、真実はトニーがヤン・ファミリーの作戦の真の立役者だと考えられている」とホンティベロス上院議員は語った。

― 軍事演習で牽制
 9月28日、フィリピン国軍参謀総長ロメオ・ブラウナー・ジュニアは、フィリピン、オーストラリア、日本、ニュージーランド、米国がフィリピン排他的経済水域で合同海上演習を行っていることを明らかにした。
 ブラウナー参謀総長は、声明で、多国間海上協力活動には参加国の海軍と空軍部隊が関与しており、「自由で開かれたインド太平洋を支援する地域および国際協力を強化するという共同の取り組みを示す」と述べた。
 この合同軍事演習についての情報を事前に受けていた中国は、合同軍事演習と同じ9月28日、南シナ海において空軍と海軍の軍事演習を実施した。
 9月27日に米国トニー・ブリンケン国務長官と中国の王毅外相兼党中央政治局委員がニューヨークで会談し、南シナ海について意見を交わした翌日の出来事であった。

― ミサイルで牽制
 中国は9月25日、太平洋ハワイ周辺海域に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したと発表した。この動きは同国の核増強に対する国際的な懸念を高めている。
 ICBMはダミー弾頭を搭載し、午前8時44分に人民解放軍ロケット軍によって発射された。中国国防省は同日の声明で、「予想海域に落下した」と述べ、これは「年次訓練計画における日常的な取り決め」であり、いかなる国や目標にも向けられたものではないと付け加えた。
 しかし、中国が国際海域に向けてICBMを発射するのは44年ぶりのことであり、領海問題で中国に敵対するフィリピンなど米国を中心とする南シナ海の勢力への牽制であることは間違いない。フィリピンは、米国の中距離ミサイルシステム・タイフォンの恒久的な配備やタイフォン購入の希望を繰り返しているが、フィリピンでのミサイル配備の動きも中国の懸念の大きな理由となっている。
 25日にマニラで開催された防衛展示会において、ブラウナー参謀総長は、記者団に向かって「彼ら(中距離ミサイルシステム)には永遠にここに留まってほしい」「我々は、まだ彼ら(米国)の返答を待っている状況」と語った。

〈Source〉
As docu angers Guo, she’s told about ‘8 steps’ of Chinese spying, Inquirer, September 29, 2024.
China tests ICBM; PH hopes to keep US missile launcher, Inquirer, September 26, 2024.
Duterte aide’s brother faked PH identity for gun, Pogo, Inquirer, September 25, 2024.
Imee Marcos withdraws from admin Senate slate to ‘shield brother, friends’, Inquirer, September 30, 2024.
PBBM: Admin coalition still supports Imee’s reelection bid, Philippine News Agency, September 30, 2024.
PH holds joint drills with Australia, Japan, New Zealand and US in Philippine waters, ABS-CBN, September 28, 2024.
Sen. Imee Marcos on 2025 reelection bid: ‘I choose
to stand alone’
, Inquirer, September 28, 2024.

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