フィリピン政経フォーカス
(1月23日-2月7日)

【写真】自身のフェイスブックでロムアルデスへの批判を強めるアイミー(写真上)/via Facebook of Senator Imee R. Marcos、February 1, 2024. と、批判をかわすロムアルデス(写真下)/via Romualdez-led House continues to build goodwill with Pinoys – solons, Philippines News Agency, November 2, 2023.

― アイミー:統一チームを立て直し、国民発議を拒否
 マルコス大統領の姉であるアイミー・マルコス上院議員は、亀裂深まるボンボン-サラ統一チーム(UniTeam)を立て直し、国民発議による憲法改正に反対するコメントを、自身のフェイスブックで矢継ぎ早に投稿している。

「私は統一チームを立て直す(salvage)」
「統一チームは私の発案」
「二院制こそがフィリピン民主主義の根幹(国民発議が要求する上院と下院の合同投票による憲法改正に反対)」
「マルコス政権内に国ではなく自身の野心と虚偽のために行動する人(ロムアルデス下院議長を含む下院の国民発議支持者)が多くいる」

― 上院の結束
 国民発議の運動は、憲法改正に関して、上院と下院を合わせた票数で決議することを要求している。両院でそれぞれ憲法改正案を通過させなければならない従来の仕組みと異なり、国民発議が通れば、上院24議員に対して下院315議員という、圧倒的多数の議員数を有する下院議員の一票の重要性が高まるのに対して、上院議員の一票の重要性は著しく低下することとなる。
 上院議員たちは、フィリピンの民主制度の根幹である二院制の基盤を否定するものであり、しかも国民発議が一部の政治家によって操作されている疑惑があるとの理由で、国民発議に対して強く反対する。1月23日、上院議会は、国民発議を拒否する決議案を採択した。この議決では、24人全ての上院議員が賛成票を投じて署名している。
 また、アイミー上院議員が委員長を務める上院の選挙改革と民衆参加委員会は、国民発議の正当性に対して調査を行っている。2月3日の上院議会での報告会では、国民発議が一部の人間に操られた虚偽の運動であること、フィリピンの民主主義の根幹である二院制を蔑ろにすること、署名の入った請願書に期限が記載されていないためいつでも何度でも利用し得る危険なものであることを説明し、決して受け入れてはならないものであることが強調された。

― ミンダナオ独立? 敵対強めるドゥテルテ一族のマルコス批判
 ドゥテルテ前大統領の次男、サラ副大統領の弟であるセバスチャン・ドゥテルテ ダバオ市長は、28日、マルコス大統領の弱腰の反共産党政策やドラッグ戦争政策、そして、国民を危険に陥れる親米政策を批判し、「国家に対する愛と希望がないなら辞職」すべきであると発言した。また、このセバスチャン市長の発言を、姉のサラ副大統領は、彼女が政権内の一部の人たち(ロムアルデス下院議長のグループ)から受けている卑劣な扱いに怒る兄弟愛の発言であると擁護している。
 さらに1月31日、ドゥテルテ前大統領は、マルコス大統領の憲法改正の動きに対して、地元政治勢力が再結集して「ミンダナオ島の分離独立」を目指す運動を始めるだろうと述べた。彼は、「血生臭い」手段ではなく、国連に定められたプロセスに従った運動となるだろうと付け加えた。ドゥテルテ前大統領は、その3日前にはマルコス大統領を違法ドラッグ利用者であると非難している。

― ロムアルデスを守る下院議員たち
 「国民発議やドゥテルテ一族のマルコス政権からの排除を背後で操っている」との疑惑について、ロムアルデス下院議長は、記者から質問を受ける度に「根拠がない」デタラメだと答え、疑惑を口にする人たちに対して、「証拠を出してみろ」と問い返す。アイミー上院議員やドゥテルテ一族とは異なり、感情を露わにすることはない。
 また、国民発議の発起人であるノエル・オニャーテとの会合を認めたものの、自身はファシリテーターに過ぎないことを強調し、国民の意思に基づいた運動に対して議員として対応しているに過ぎないことを説明した。

― 明言避けるマルコス大統領
 マルコス大統領は、国民発議が亀裂を生じさせていることに懸念を表し、二院制を変わらず重視していくと述べたものの、国民発議そのものについての明言は避けている。
 他方、選挙管理委員会は、国民発議の手続きの一時的な停止を発表した。
 また、ドゥテルテ前大統領の「ミンダナオ分離独立」発言について、マルコス大統領は、「ファンタジー(あり得ない夢物語)だ」として、一笑に付した。他方、国家安全保障担当顧問のエドゥアルド・アニョは、2月3日、記者団に対して、フィリピンは分離独立の企てを鎮圧するために「力」を行使する用意があると語った。

― 10日間の調査
1月23日から2月2日にかけて、意見と表現の自由に関する国連特別報告者アイリーン・カーンがフィリピンを訪れた。この約10日間のフィリピンでの滞在の中で、彼女は、メトロマニラ、バギオ市、タクロバン市、セブ市を訪れ、また、昨年、6年半にわたる勾留から解放されたレイラ・デ・リマ前上院議員や、未だ勾留中のジャーナリスト、フレンチー・メイ・クンピオとも面会した。
 さらに、訪れた各地で意見と表現の自由に関して、フィリピン政府関係者、専門家、市民組織メンバー、被害者たちと会合し、情報を収集し、積極的な議論を行うと共に、いくつもの提案を行った。
 カーン国連特別報告者は、来年6月に今回の調査の結果を国連の人権委員会で報告する。

― 優先すべき3法案
 1月31日、下院議員指導者らと会合を行なったカーン国連特別報告者は、言論と表現の自由を促進することに関係する、現在審議中の重要な14法案のうち、特に3法案を優先するよう議員らに伝えた。1つは人権活動家の更なる保護を求める人権擁護活動家法案、2つめは報道機関に「職場における人道的な条件」を求めるメディア福祉法案、3つめは名誉毀損の非犯罪化法案である。
 下院議会の声明によると、会合に出席した下院議員らは、国内の人権をさらに擁護する法案の可決をカーン国連特別報告者に保証した。

― 調査結果に関する記者会見
 2月2日の最終日、カーン国連特別報告者は、記者団の前で約10日間にわたる調査に関する報告を行った。そこでは、フィリピンが長期にわたって民主主義を標榜する国であり続けていること、マルコス政権に入り、重要な変化が生じていることに敬意を払う一方で、言論や表現の自由に関して、未だ非常に深刻な状況であり続けており、政府の更なる努力が必要であることが強調された。
 彼女は、政府は脅威に対して超法規的な行動を選択すべきではなく、法の遵守と寛容さこそが必要であることを繰り返した。さらに、赤タグ付けや地方共産党の武装闘争を終わらせるための国家タスクフォース(NTF-ELCAC)を強く批判し、それが政府に批判的なジャーナリストや市民組織の安全な空間を奪っていることに強い懸念を示した。

〈Source〉
Baste clarifies: I apologized to Imee, not to President Marcos, ABS-CBN, February 4, 2024.
Bongbong Marcos was never on gov’t drugs watch list – PDEA, Inquirer, January 29, 2024.
Duterte now wants ‘separate, independent’ Mindanao, February 1, 2024.
House OKs resolution defending Romualdez vs Senate’s ‘intense assault’, Inquirer, February 5, 2024.
Imee Marcos asks Comelec to throw out signatures for people’s initiative, Inquirer, February 1, 2024.
Imee Marcos: I am ‘determined to salvage’ UniTeam, ABS-CBN, February 1, 2024.
Marcos admits PI for Charter change politically exploited, Inquirer, January 31, 2024.
PH ready to use ‘forces’ to quell any secession attempt – Año, Inquirer, February 4, 2024.
Rift intensifies between Philippines president and Duterte family, Reuters January 29, 2024.
Romualdez just ‘facilitator’ of people’s initiative, not its ‘orchestrator’, Inquirer, January 31, 2024.
THUMBS DOWN, Philippines News Agency, January 23, 2024.
UN rapporteur urges House to prioritize these 3 bills, Inquirer, February 3, 2024.
VP Duterte on Baste’s call for Marcos to resign: It’s brotherly love, Inquirer, January 29, 2024.
WATCH: UN Special Rapporteur Irene Khan in conversation with PH media, Rappler, February 2, 2024.

あなたは知っていますか?

日本に送られてくるバナナの生産者たちが
私たちのために1日16時間も働いていることを

詳しく見る

最新情報をチェックしよう!
>ひとりの微力が大きな力になる。

ひとりの微力が大きな力になる。


一人ひとりの力は小さいかもしれないけれど、
たくさんの力が集まればきっと世界は変えられる。
あなたも世界を変える一員として
私たちに力を貸していただけないでしょうか?

Painting:Maria Sol Taule, Human Rights Lawyer and Visual Artist

寄付する(白)