フィリピン政経フォーカス
(1月1日-1月9日)

【写真】マルコス大統領(右)とドゥテルテ前大統領(左)/via Marcos dismisses criticism that his campaign played down family corruption, Reuters, May 5, 2023. Philippines' Duterte says he is retiring from politics, but not everyone is convinced, Reuters, October 3, 2021.

― ドゥテルテ、不満分子と会合か?
 1月7日、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領は、記者に対して肩をすくめ、マルコス政権に不満を持つ警官や軍人がダバオ市でドゥテルテと会合したとの噂を次のような言葉で否定した。
 「誰が私を信じているというのだ?警察や軍に私と会おうとするような愚かなやつがいるのか?いるとしたら、そいつらは狂っている。」
 「私はマルコスに満足している。なぜ、私が彼を追い出さなければならないのか?」

― ドゥテルテ支持者による反乱疑惑?
 昨年11月、マルコス政権に対するフィリピン国軍内の反乱計画(destabilization plot)疑いが表面化した際、ロミオ・ブラウナー陸軍司令官は反乱計画の疑惑を否定した。しかし、退役軍人の間に強い不平不満があり、不満を持つ退役軍人らと話し合ったこと、現役軍人を巻き込まないよう彼らに警告したことをブラウナー司令官は認めている。
 また、ドゥテルテ前大統領の報道官であったハリー・ロケは、2024年1月の英字新聞Philstarのコラムにおいて、反乱計画が明らかになったことによりマルコス大統領が国際刑事裁判所(ICC)再加入を考え始めたと語っている。ロケは、この説明によって、反乱を計画する母体がドゥテルテ政権下でのドラッグ戦争支持者たちであることを仄めかしている。

― マルコス:望むならいつでもドゥテルテとの話し合いに応じる
 1月7日大統領府は、「マルコス大統領は、ドゥテルテ(前)大統領といつでも面会できる。大統領は今、ドゥテルテが会談したいかどうか尋ねるだろう」と記者団に述べた。
 このメッセージは、その前日にドゥテルテ前大統領が、ダバオでの記者会見において、彼の強力な支持基盤である全国メディアSMNIが放送停止措置を受けていることについて懸念を示し、このことに関してマルコス大統領と話したいと語ったことを受けたものである。

― ICC調査官入国をめぐる混乱
 クリスピン・レムリア司法長官は、1月1日に記者会見を開き、ICC調査官がフィリピンに既に入国しているという事実はないことを明言した。ICC調査官が調査に訪れる場合、フィリピン政府に連絡する義務があり、フィリピン政府はそのような連絡をICCから受けていないという。
 レムリア長官の発言は、年末にドゥテルテ前大統領の報道官を務めたロケのSNNによる以下の発言に対応したものである。
 「私の元同僚で ICC メンバーの外国人 1 人がフィリピンを訪れています。 私たちの国は既にICCメンバー国でないため、(主権を無視してメンバーでない国を勝手に行なっている)彼らの調査が憲法に違反していることは間違いありません。」

― 政府に協力義務はないが、支援者も政府への報告義務はない
 1月4日、ICC調査に関する疑惑を受け、メナルド・ゲバラ訟務長官は、「もし、ICCの職員が実際にフィリピンに入国しているならば、フィリピン入国管理局は必要な情報を持っているはずだ」と発言した。
 しかし、ゲバラ訴訟長官は、ICC職員がフィリピンに滞在することがなくとも、多くの国内支援者から情報を得て調査を進めることができることを強調した。また、ICCの調査に協力する義務がフィリピン政府にないこと、そしてフィリピン国内の協力者もフィリピン政府に一々報告する必要のないことを述べた。

― マルコス大統領、パナイ大停電を人災と非難
 1月2日、パナイ島4州が広範囲の停電に見舞われた。フィリピン全国送電会社(NGCP)によると、この停電は、複数の発電所の不具合によって配電システムが崩壊したことによる。停電は5日にようやく回復した。
 パナイ島の停電の問題を深刻に受け止めたマルコス大統領は、3日、停電が国民に著しい困難と命の危険を与え、また、巨額の経済的な損失をもたらした人災として、NGCPの不手際を非難した。マルコス大統領は、2023年4月にもNGCPに同様の不手際があったこと、その際の同じことを繰り返さないという約束が未だ果たされていないことに言及した。

― 中国の影響力排除のための非難か?
 マルティン・ロムアルデス下院議長は、自身の声明において、NGCPの不手際による被害や危険を深刻に捉えると同時に、NGCPの改善のために政府系ファンドであるマハルリカ基金を利用する提案をした。
 NGCPは、中国資本が40%を出資する合弁企業で、フィリピン全土の送電を請け負う。これまでも度々、フィリピンの基幹産業への中国の高い影響力を危惧する主張が議会でなされてきており、マハルリカ基金を通した介入によって中国の影響を排し、国家の管理力を高めようとする狙いもある。

〈Source〉
Cooperation?, philstar, January 6, 2024.
Duterte debunks destabilization, opposes Cha-cha, philstar, January 8, 2024.
Guevarra: ICC prosecutor has local supporters for probe, Inquirer, January 6, 2024.
‘I’m comfortable with Marcos’: Duterte denies link to destabilize administration, CNN Philippines, January 7, 2024.
Marcos blames blackout on ‘NGCP’s failure to act’, Inquirer, January 3, 2024.
Marcos to see Duterte ‘if he wants a meeting’, Inquirer, January 8, 2024.
PNP debunks ‘destabilization plot’ vs Marcos administration, ABS-CBN, January 6, 2024.
Sara Duterte is ‘my president,’ says retired soldier. His Matikas ‘mistahs’ are annoyed., Rappler, January 5, 2024.
Sec Remulla: No info on presence of ICC’s probers in PH, Manila Bulletin, January 1, 2024.

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