ドゥテルテ・ウォッチ/高まる中国との緊張と、進む対中軍事協力/マラウィ市での爆破テロ事件
ドゥテルテ(父娘)・ウォッチ
― 共産党との和平交渉再開は「悪魔との合意」
11月23日、フィリピン政府と民族民主戦線(NDF)は、オスロ(ノルウェー)において、2017年に停止されていた和平交渉を再開することで合意に達した。昨年からノルウェー政府の仲介で協議が進められており、フィリピン政府によると国外の脅威に対するために結束する必要性をNDFとともに確認した。
「この交渉は単なる政治的駆け引きではない。(この交渉は)道徳的義務であり、長い間我が国を分断してきた亀裂を修復する機会なのだ。 私たちはただ条件を交渉しているだけではない。 私たちはすべてのフィリピン人のために平和な未来の布を織っているのだ」「心を広く持ってこの機会を受け入れ、平和が繁栄できる環境を育もう。マルコス大統領のリーダーシップの下、我々は共に、繁栄するだけでなく多様性において調和し団結するフィリピンを目指して努力していく」とロムアルデス下院議長は記者団に語った。
他方、サラ・ドゥテルテ副大統領は、地方共産党の武装闘争を終わらせるための国家タスクフォース(NTF-ELCAC)の5周年記念に際して、自身のフェースブックで、和平交渉再開の合意と政治囚釈放は「悪魔との合意」であるとしてマルコス大統領に再考を要請した。
― 機密費の用途を説明せよ
最高裁判所は、サラ副大統領に対し、2022年に副大統領府に充てられた機密費1億2500万ペソの合憲性を争う申し立てに応じるよう命じた。
元選挙管理委員会(Comelec)委員長のクリスチャン・モンソッドが率いる申立人らは最高裁判所に対して、副大統領府への1億2500万ペソの移管は違憲であると宣言するよう、さらに、その資金を財務省に返還する命令を出すよう求めている。
― ドゥテルテ前大統領、予備調査を欠席
ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領は、12月4日、ケソン市の検察事務所で予定されていた、ACTパーティリスト代表フランス・カストロ下院議員の申し立てに対する第1回予備調査を欠席した。
ドゥテルテ前大統領の欠席により、12月11日に予定されていた予備調査は12月15日に延期された。カストロ下院議員が4日に追加の告訴宣誓供述書を提出したため、ドゥテルテ前大統領は現在、対応しなければならない2件の告訴状を抱えている。
高まる中国との緊張と、進む対中軍事協力
― 南シナ海に「群がる」135隻の中国船
12月2日、フィリピン沿岸警備隊(PCG)が南シナ海を巡視中、少なくとも135隻の中国海上民兵船がジュリアン・フェリペ(ウィットサン)礁に「群がる」のが目撃された。PCGの提供する写真では、30隻もの船が横一列に並んでいることが確認できる。
PCGは無線で警告を発したが中国船からの反応はなかった。民兵船と呼ばれるこれら中国船は、武装した退役軍人や漁民が乗船していると言われている。
― 進む対中軍事協力
10月に続き、12月4日から日米豪で実施された日本の島しょ防衛を想定した共同指揮演習にフィリピン軍がオブザーバーとして参加した。
12月2日、フィリピンとフランスの国防相は土曜日、互いの領土への軍隊派遣を可能にする協定を追求することを明らかにした。これは戦略上の要衝である南シナ海に位置する諸島国家が求めている最新の協定である。フィリピンは、すでにオーストラリアとも同様の協定を締結しており、日本とも同様の協定に向けた協議の開始に同意している。
マラウィ市での爆破テロ事件
― IS犯行声明
過激派組織「イスラム国(IS)」は、12月3日に4人の死者を出した国立ミンダナオ大学での爆破事件に関して、テレグラムで犯行を声明。
3日の爆破テロは、国立ミンダナオ大学体育館において行われていたミサの最中に実行された。爆発は、少なくとも4人の死者と50人の負傷者を出している。
事件後、マルコス大統領は、「外国人テロリストによる無分別で最も凶悪な行為」として犯行を強く非難した。
― 紛争地となるマラウィ
マラウィ市は、2017年にIS関連組織マウテ(Maute group)によって5ヶ月にわたって包囲された。この間、フィリピン国軍との戦闘によって市民を含む1000人以上が犠牲になった。
また、爆破事件の2日前には、フィリピン国軍が軍事作戦を通してマウテのメンバーと見られる11人を殺害し、その翌日にはアブサヤフのリーダーを殺害している。フィリピン国軍によると、今回の爆破テロは、それらメンバー殺害への報復の可能性があるとして捜査を続けている。また、フィリピン国軍は、現在2名の関係者を捜査中であることも明らかにした。
〈Source〉
Chinese militia ships swarm Julian Felipe Reef in West Philippine Sea, Inquirer, December 4, 2023.
Duterte a no-show at preliminary probe into Castro’s grave threat complaint, Rappler, December 4, 2023.
Islamic State claims responsibility for deadly Marawi bombing, Rappler, December 4, 2023.
Marawi blast: NSC points to lapse of security in MSU, ABS-CBN, December 5, 2023.
MSU church service bombing could be ‘retaliatory attack’: AFP, ABS-CBN, December 3, 2023.
Philippines, France to pursue key defense pact, ABS-CBN, December 2, 2023.
Philippine government, rebels agree to peace negotiations, ABS-CBN, November 29, 2023.
Romualdez on reviving peace talks with NDF: It’s not a political maneuver, Inquirer, December 4, 2023.
SC to VP Sara: Answer petition on constitutionality of OVP’s P125M CF, Inquirer, December 4, 2023.
VP Duterte tells Marcos: Resuming peace talks with communist rebels an ‘agreement with the devil’, ABS-CBN, December 4, 2023.