【東京=15日】12月10日、ジョージ・バイデン合衆国大統領の呼びかけによって開催された民主主義サミットにおいて、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、自らの政治を民主主義の理念から評価し、平和で誠実で信頼できる大統領選挙の実施を確約した。しかし、民主主義サミットへのドゥテルテ大統領の参加と発言は、フィリピン政府に対してのみならず、バイデン政権に対しても、その民主主義の定義に大きな疑問を投げかけている。
― 「これはジョークではない」
民主主義サミット招待国リストが明らかになって以降、世界のニュースがフィリピンを名指しして、バイデンの戦略に疑問の目を向け始めた。例えば、合衆国のニュースサイト、フォーリン・ポリシーは、フィリピンをはじめとしたいくつかの「問題国」の招待が明確化された10月19日、「バイデンの民主主義サミット、民主的でない国々を含む:ポーランド、メキシコ、フィリピン等、近年民主的な信任を弱体化させている国ばかり」と冠した記事を公表した。
サミット開始日である12月9日、合衆国のニュース雑誌タイムは、「まるでジョークみたいだ」と言って不可解な参加国選定基準について疑問を投げかけた。「自らの民主主義制度を破壊しているインドのモディ、フィリピンのドゥテルテ、ブラジルのボルソナロといった強者が(民主主義サミットの参加)基準を満たしたことになっているにもかかわらず、なぜ、同種のトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアンが基準を満たさないと判断されたのか?」と。
― フィリピンは「活気に満ちた民主主義」?
12月10日、民主主義サミットにおいてドゥテルテ大統領は、フィリピンが「活気に満ちた民主主義」であると主張し、「表現と報道の自由が十分に享受され、自由で誠実な選挙を通じて定期的な権力の移転が保証されている」と述べた。さらに、ドゥテルテ大統領は、自由で誠実な選挙に対して最善を尽くし、権力を後継者に委譲する意欲を強調した。
― 同日にレッサ氏がノーベル平和賞を受賞する矛盾
ドゥテルテ大統領のビデオメッセージと同日、ドゥテルテ政権による報道の自由と民主主義への攻撃を批判し続けてきたマリア・レッサ氏がノーベル平和賞を受賞した。
国境なき記者団による最新の世界報道自由度ランキングにおいて、フィリピンは180ヶ国中138位にランクされている。その報告書はレッサ氏に対する「グロテスクな司法的嫌がらせキャンペーン」を含む、メディアに対するドゥテルテ大統領の継続的な攻撃やフィリピン政府による最大報道機関ABS-CBNの閉鎖に言及している。
― 在米フィリピン人からの批判
12月8日、グッドガバナンスのための在米フィリピン人(USFGG)のイニシアティブによって合衆国内のフィリピン人グループは、民主主義サミットにドゥテルテ大統領を招待するバイデン大統領の決定に対し、抗議のための手紙をバイデン大統領に送った。この手紙は、ドゥテルテ大統領の犯罪の大きさを考えると、彼のサミットへの出席は合衆国を貶めるものであると述べている。
さらに10日、USFGGと関連組織は、ホワイトハウスの前で、ドゥテルテ大統領の民主主義サミット参加およびドゥテルテ大統領の発言を批判した。また、ドゥテルテ大統領の語る「活気に満ちた民主主義」が、レッドタギング(共産主義者のレッテル貼り)などによって批判者を沈黙させ、貧しい人々を標的としたドラッグ戦争を行い、テロ対策を隠れ蓑に批判者への弾圧を合法化しているではないかと訴えた。
〈Source〉
Biden’s Summit for Democracy Will Include Some Not-So-Democratic Countries, Foreign Policy, October 19, 2021.
Fil-Am activists dispute Duterte claim at US summit, Inquirer, December 13, 2021.
Duterte touts ‘free’ press, vows ‘honest’ elections at Biden’s democracy summit, philstar, December 11, 2021.
At Biden’s Democracy Summit, Duterte vows ‘honest, peaceful, free’ 2022 PH elections, Rappler, December 11, 2021.
Joe Biden’s Democracy Summit Is the Height of Hypocrisy, TIME, December 9, 2021