加川 真美(アジアなりわいネット代表)
asialivelihood.net@gmail.com
台風コンパス(フィリピン名マリン)は、2021年の10月11日、12日と2日間に渡りフィリピン北部を襲い、現地の人々の生活基盤を奪い去りました。2日間で例年の1か月分の雨量の豪雨による被害はルソン島北部の5つ以上の州に及び、各地で冠水被害、土砂崩れ、道路の寸断、橋の崩落といった被害を生みました。10月14日の時点で少なくとも19人の死者と14人の行方不明者、多数の負傷者を出しています。数百もの家屋が倒壊し、確認できるだけでも1500世帯、5800人を超える人々が避難所に避難を余儀なくされています。被害を受けた地域の主産業は農業です。今回の台風は農地の冠水によって雨季の終わりの収穫前の水田や野菜畑の作物に大きな被害を与えました。今回の農業分野が受けたダメージは全地域を合わせると1億ドル(約50億ペソ)に及び、生活基盤を直撃しています。
― アブラ州の被害状況
今回被害を受けた地域の一つであるアブラ州は、コルディレラ地方にある小さな州です。アブラ州は山々に囲まれ盆地と山からなる州です、盆地には山からの多くの河川が流入しています。今回の台風では川が決壊、氾濫し、広い地域で冠水しました。被害を受けたのは流入河川域に住む広範な農地でした。田畑は泥に埋まり、豚、鶏をはじめとした家畜が流されました。アブラ州の主な産業は農業で、ほとんどが 1ha~2ha の小規模な自作農民です。今回、被害を受けたのも、このような農民たちでした。アブラ州は雨季と乾季の違いが明瞭で、乾季に耕作できる地域は約2割の灌漑地域に限られていましたが、近年になって小規模灌漑の下での野菜作と家畜を複合させた農業に取り組みだしたところでした。その農地や家畜が、大きな被害を受けました。
― 放置される被災農民たち
アブラ州にはかつて山岳地帯を拠点とするゲリラと州政府の間で紛争が盛んだったいきさつがあり、州政府は民衆に協力的ではありません。今も、政府は民衆に対立的な立場をとっており、州都バンゲドに入る幹線道路にはゲートがおかれ、銃器を持った軍による顔のチェックを受けないと通行できません。州政府は民衆、特に農村部の民衆に冷淡です。
また、知名度の低い地域であるため、観光地としても名の知られたバギオのように被害がメディア報道されることなく、国の支援や外部からの支援の手が差し伸べられる見込みもありません。災害時における忘れられた地域だといえます。農務省は、2万ペソを被災農民に10年間無利子で貸し出すと発表しましたが、アブラ州のように知名度の低い、商業化されていない地域で、州政府から無視されている農民たちのもとには届きません。そのため、被災した農民たちは、支援を受けられない状況にあります。
― 支援への協力を
私が代表を務めるアジアなりわいネットという任意団体は、2018年からアブラの農民と交流を続けてきました。今回、現地からの農民組合Integrated Farming System(IFS)要望に応え、農業復興に必要な資金を無利子で借りられるシードバンクを設立することになりました。シードバンクとは、種子や子豚や雛、農業資材などの初期費用を無利子で貸し出し、収穫時に返却してもらい次の災害に備えようとする災害保険としての役割を果たす基金です。どうか、厳しい状況に置かれているアブラ州の農民を鑑み、アブラ州の農民を救う基金のための募金への協力をお願いいたします。
■募金先
他銀行からお振込みの場合
銀行名:ゆうちょ銀行 店名:四三八(ヨンサンハチ) 店番:438 普通預金
口座番号:8968284 名義:アジアナリワイネット
ゆうちょ銀行からのご送金の場合
記号:14350 番号:89682841 名義:アジアナリワイネット